「邪魔だよ。そこ、どいて」棚の前で詰め寄る客。だが、店員の対応に救われた瞬間
開店直後の調味料売り場
朝いちばんのスーパーへ、醤油を買いに立ち寄ったときのことです。
店内はまだ人が少なく、私は調味料売り場で二種類の醤油を手に取っていました。
家族から「塩分の表示を見て選んでほしい」と頼まれていたため、棚の前でラベルを見比べていたのです。
少し先では、店員が品出しをしていました。
段ボールを載せた細長いカートが棚沿いに置かれていたため、通路は普段より少し狭くなっていました。
それでも、人が一人通る程度の幅は残っています。
すると後ろから、低い声がしました。
「邪魔だよ。そこ、どいて」
振り返ると、買い物カゴを持った年配の男性が立っていました。
私は棚にさらに体を寄せました。
「すみません。これなら通れますか」
ところが男性は動きません。
「そうじゃない。邪魔だからどけって言ってるんだよ」
声が大きくなり、男性が一歩近づいてきました。
私は商品を棚へ戻そうか迷いました。数秒表示を確認するだけだったのですが、これ以上やり取りを続けるのも嫌だったからです。
すると、少し離れたところにいた店員がこちらへ歩いてきました。
店員が静かに動かした品出しカート
店員は何も言わず、まず品出し用のカートをさらに棚側へ寄せました。
それまでより通路が広くなり、大人が余裕を持って通れるスペースができます。
そして男性に向かって、落ち着いた声で言いました。
「お待たせして申し訳ありません。こちら、通れるようにしましたのでどうぞ」
男性は一瞬黙りました。
店員は誰が悪いとも言いません。
ただ、空いた通路を手で示して待っています。
男性は私と店員を交互に見たあと、小さく息を吐きました。
「……最初からそうしてくれればいいんだよ」
そう言い残し、空いた通路を歩いていきました。
店員は男性の背中を追うこともなく、私に向かって軽く頭を下げました。
「狭くなっていて申し訳ありませんでした。大丈夫でしたか」
「はい。ありがとうございます」
それだけ確認すると、店員は再び品出しへ戻っていきました。
言い返さなくてよかったと思った朝
私は改めて醤油を手に取り、表示を確認してから一本をカゴへ入れました。
正直なところ、男性の言い方には腹が立っていました。
人が通れるだけの場所は残っていたのですから、「そこまで言わなくても」と言い返したい気持ちもありました。
けれど、あの場で声を張り上げていたら、朝の静かな売り場で騒いでいるのは男性だけではなく、私も同じだったでしょう。
店員はどちらかを責めるのではなく、ただ通路を広げることでその場を収めました。
レジへ向かいながら、ああいう対応もあるのだなと思いました。
言い返して勝つことより、これ以上揉めない形で終わらせるほうがいい場面もあります。
買った醤油一本を袋に入れて店を出たときには、さっきまでの緊張もだいぶ薄れていました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














