「すぐ代わるわよ」水族館で娘の順番を奪った女性。ヒトデに夢中だった彼女に、係員が告げた一言
あと少しで娘の番だったのに
娘がまだ保育園児だったころ、週末に家族で水族館へ出かけたときの話です。
館内には、ヒトデなどの海の生き物に直接さわれるタッチプールがありました。娘が興味を示したので、私も一緒に列に並ぶことに。夫は混雑を避け、通路の端で荷物番をしてくれていました。
その日は家族連れが多く、列はなかなか進みません。それでも娘は、前の人たちが生き物にさわる様子をじっと見ながら、おとなしく待っていました。
「ママ、ヒトデってかたいのかな?」
「どうだろうね。あとで教えてね」
そんな会話をしているうちに、ようやく私たちの順番が来ました。
前の人が離れ、娘がうれしそうにプールへ手を伸ばした、そのときです。
横から大人の女性が入り込み、娘を体で押しのけるようにして、プールの前に立ったのです。
「わっ……!」
よろけた娘を、私は慌てて後ろから抱きとめました。
「あの、すみません。この子が先に並んでいたんですけど……」
すると女性は、こちらをほとんど見ないまま答えました。
「すぐ代わるわよ」
そう言ってプールに手を入れ、ヒトデをさわり始めたのです。
娘を見ると、唇をぎゅっと結んでいました。あんなに楽しみにしていたのに、泣くのをこらえているようでした。
「あの、ずっと順番を待っていたので……」
私がもう一度声をかけると、女性は面倒そうに言いました。
「子どもは後でゆっくりさわればいいじゃない」
その言葉に、私は返す言葉が見つかりませんでした。
係員が伝えた、当たり前の順番
困っていると、制服姿の女性係員がこちらへやってきました。
後ろに並んでいた家族もこちらを気にしていましたが、誰が係員を呼んだのかは分かりません。
係員が声をかけてくれたので、私は娘が先に並んでいたことと、順番を抜かされてしまったことを伝えました。
係員は女性に向き直り、落ち着いた声で言いました。
「お客様、こちらは順番にお願いしているんです」
「え?ちょっとさわってるだけでしょ」
女性がそう返すと、係員は私のそばにいる娘を見て、続けました。
「この子が先でしたね」
そして女性に向かって、はっきりと伝えたのです。
「申し訳ありませんが、列の後ろにお並びください」
女性は一瞬、言葉に詰まった様子でした。
周囲の視線にも気づいたのか、顔を赤くしてプールから手を引きました。
列の中ほどにいた女の子が、母親の袖を引いて尋ねます。
「あのおばちゃんも、うしろにならぶの?」
女性は何も言わず、並んでいる家族の横を通り、列のいちばん後ろへ向かいました。
ようやく娘の順番です。
係員は娘の背中にそっと手を添えてプールのふちへ案内すると、目線を合わせて声をかけてくれました。
「お待たせしました。指一本で、そっとさわってみてね」
娘は少し緊張した様子で、ヒトデに指先を伸ばしました。
そして、さわった瞬間、ぱっと私の顔を見上げたのです。
「ママ!ざらざらしてる!」
さっきまで泣きそうだった娘が、ようやく笑顔になりました。
私もほっとして、係員にお礼を伝えました。
長い時間待っていた娘に、ちゃんと順番が回ってきたこと。その当たり前のことが、あの日はとてもうれしく感じられました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














