「気づかないって何?顔にかかったのよ」洗面台で私に怒った女性客。だが、自分の髪から飛んだ水滴を指摘された結果
空いている洗面台があるのに、なぜか隣へ
旅館に泊まった夜のことです。
大浴場から上がった私は、浴衣に着替えて洗面台のある部屋へ向かいました。
部屋には誰もおらず、洗面台もすべて空いていました。
私はいちばん奥の角を選び、お湯で顔を洗い始めました。
しばらくすると、浴衣姿の女性客が入ってきました。
ほかにも空いている洗面台はいくつもあったのですが、その女性はなぜか私のすぐ隣に立ったのです。
少し気になったものの、私はそのまま顔をすすいでいました。
すると突然、隣から不機嫌そうな声が聞こえてきました。
「ねえ、こっちまで飛んできてるんだけど」
驚いて顔を上げると、女性がタオルで頬をぬぐいながら、こちらをにらんでいました。
「えっ、すみません。気づきませんでした」
「気づかないって何?顔にかかったのよ」
どうやら、私が顔を洗ったときのお湯が少し跳ねてしまったようです。
もちろん、かけてしまったのなら申し訳ありません。
ただ、空いている洗面台がたくさんある中で隣に来た女性から、そこまで強い口調で責められるとは思いませんでした。
これ以上言い合いになるのも嫌だったので、私は荷物を持ちました。
「すみません。離れますね」
すると女性は、大きなため息をつきました。
私は何も言い返さず、少し離れた洗面台へ移動して化粧水をつけ始めました。
今度は自分の水滴を指摘された女性
そのとき、別の浴衣姿の女性客が入ってきました。
その人は、先ほどまで私が使っていた角の洗面台に荷物を置き、隣にいる女性に声をかけました。
「お隣、使わせてくださいね」
「ええ」
短く返事をした女性は、ドライヤーを手に取り、髪を乾かし始めました。
ところが、濡れた髪を振りながら風を当てるたびに、髪についた水滴が横へ飛んでいました。
その水滴が、隣で洗面台を使っている女性の腕にもかかっていたのです。
私は少し離れたところから、その様子を見ていました。
すると、あとから来た女性が手を止め、濡れた腕を少し持ち上げて、はっきりと声をかけました。
「かかってますよ」
ドライヤーを使っていた女性は、はっとした様子で手を止めました。
さっき私に向けていた厳しい表情とは違い、今度は気まずそうに目を伏せています。
「……すみません」
小さな声で謝ると、女性はドライヤーの向きを変え、うつむきながら弱い風で髪を乾かし始めました。
つい先ほど、私に水がかかったと強く怒っていた女性が、今度は自分の髪から飛んだ水滴を注意されているのです。
まさかこんな形で同じことが起きるとは思わず、私も驚いてしまいました。
あとから来た女性は、ハンカチで腕を拭くと、こちらに目を向けました。
目が合うと、その女性が小さく笑ったので、私も思わず笑い返しました。
言い返さずに場所を移ったときは、なんだか納得できない気持ちが残っていました。
けれど、今度は自分が注意される側になった女性の姿を見て、胸のつかえが少し取れたような気がしました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














