「私が先に並んでいたんですけど」スーパーのレジ前で言い合うふたり。だが、冷静だった私が最後に赤面した理由
列の先頭のつもりだった私
夕方のスーパーは、仕事帰りのお客さんで混み合っていました。私は野菜と牛乳の入ったカゴを提げ、レジの手前の通路で順番を待っていました。
目の前にはレジが二つ。私は、自分が立っている通路からそのまま進めるものだと思っていたのです。
ところが、待ってもなかなか番が来ません。隣の通路からは次々にお客さんがレジへ進んでいきます。
「こっちは全然進まないな……」
少しいら立ちながらも、私はその場で待ち続けていました。
すると、レジの前から女性たちの声が聞こえてきました。先に並んでいた女性の前に、別の女性が入ってしまったようです。
「すみません、私が先に並んでいたんですけど……」
「えっ? 私もここで待っていたんですよ」
「でも、私はあちらからずっと並んでいて」
「そう言われても、私だって待っていたんです」
どちらもわざと割り込んだつもりはないようでしたが、話はかみ合いません。声が少しずつ大きくなり、レジ係の人も困った様子で手を止めました。
私は少し離れた通路から、そのやり取りを見ていました。
どちらかが一歩引けば済むのに。そう思いながら、自分は余計なことを言わずに待っていようとカゴを持ち直しました。
店員さんが示した矢印の先
そこへ、エプロン姿の若い店員さんが駆け寄ってきました。ふたりの話を聞くと、床に貼られた矢印を指して説明します。
「すみません。こちらは両方のレジ共通の列でございます」
「この矢印の先から、一列でお並びいただいているんです」
「あ、そうだったんですか」
「私、レジごとに並ぶんだと思ってました……」
ふたりは顔を見合わせ、気まずそうにうなずきました。言い合いが収まり、私もほっとしました。
そのとき、ふと自分の足元を見たのです。
そこにも矢印が貼られていました。けれど、矢印が示していたのは私の目の前のレジではありません。隣の通路にある、共通の列の入り口でした。
「あれ……?」
思わず小さな声が出ました。
私は正しい列に並んでいるつもりで、誰も並んでいない通路にひとりで立っていたのです。いつまでたっても番が来ないはずでした。
顔を上げると、さっきまで言い合っていたふたりがこちらを見ていました。店員さんも私に気づき、穏やかに声をかけます。
「お客さまも、こちらからどうぞ」
「す、すみません……」
私はカゴを抱え直し、急いで正しい列の最後尾へ向かいました。耳まで熱くなるのが分かりました。
会計を終えて外へ出ると、夕方の風が頬に当たりました。
さっきまで「どちらかが譲ればいいのに」と思っていた自分が、実は一番大きな勘違いをしていたなんて。
あの長い待ち時間を思い出したら、恥ずかしいのに、つい笑ってしまいました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














