「席はもう2枚とってあるから」試合仲間だった同僚との距離感が、少しずつ重くなった理由
気づけば、次の予定まで決まっていた
三年ほど前の職場に、同じ試合を見るのが好きな同僚がいました。廊下や給湯室で顔を合わせると、自然と試合の話になります。
「昨日の試合、見ました? 後半すごかったですね」
「見ました。最後まで起きてましたよ」
そんなやり取りが続き、何度か一緒に試合を見に行くようになりました。話の合う人ができたことがうれしく、私も最初は気軽に誘いに応じていました。
ところが、しばらくすると試合のない日にも連絡が来るようになります。前の試合の感想から次の試合、そのさらに先の予定まで、週末をはさむと何件かまとめて届いていることもありました。
「そうですね。また見ておきます」
私は、そのたびに短く返事をしていました。
ある朝、職場で同僚から声をかけられました。
「次の試合は5月だよね。席はもう2枚とってあるから」
私は一瞬、返事に困りました。まだその試合に行くとも行かないとも答えていなかったからです。
ただ、そのときは「一緒に行くつもりで取ってくれたのかな」と思いました。すでに券があると聞くと、一枚を無駄にしてしまう気がして、断りにくくなりました。
断るだけなのに、言いづらくなっていった
その後、別の用事と重なり、一度だけ試合に行けないことがありました。
「ごめんなさい。その日は予定があって、行けそうにないです」
そう伝えると、同僚は少し残念そうな顔をしました。
「そっか。最近、一緒に行けないこと多いね」
責められたわけではありません。ただ、その言葉を聞いたとき、私は少し戸惑いました。
もともとは、都合が合うときに一緒に見に行っていただけです。それがいつの間にか、「次も二人で行く」ことが前提になっているように感じたからです。
そのあとも、同僚から次の試合について連絡が来ました。
「次はどうする?席、取っておこうか?」
以前ならそのままお願いしていたかもしれません。でも、そのころには少し負担を感じるようになっていました。
「まだ予定が分からないので、今回は大丈夫です」
そう返すことが増え、私の返事も少しずつ短くなっていきました。
同僚が声を荒らげたり、強く責めたりしたことはありません。ただ、私が予定を決める前に「一緒に行くこと」が決まっていく感覚が、だんだん苦しくなっていました。
気づけば、連絡は来なくなった
しばらくすると、同僚は別に一緒に試合へ行く相手を見つけたようでした。それからは、次の試合について連絡が来ることもなくなりました。
私から関係を終わらせようと何かを言ったわけではありません。いつの間にか、以前のように職場で挨拶を交わすだけの関係に戻っていました。
別の同僚にその話をしたとき、返ってきたのはこんな言葉でした。
「悪い人じゃないんだけどね」
私も、そう思います。嫌がらせをされたわけでも、強引に何かを押しつけられたわけでもありません。
ただ、親しくなったからといって、次の予定まで当然のように決まるわけではない。その感覚が、私と同僚では少し違っていたのだと思います。
今は部署も離れています。すれ違えば挨拶をする、それだけの関係です。
それでも試合の券が2枚並んでいるのを見ると、ときどきあのころを思い出します。私が返事をする前に「二人で行くこと」が決まっていた、あの少し不思議な距離感を。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














