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2026.10.21(Wed)

「結納金ね、まだ用意してないのよ」当日の朝、母に言われた私が、結納返しを受け取って笑いそうになったワケ

「結納金ね、まだ用意してないのよ」当日の朝、母に言われた私が、結納返しを受け取って笑いそうになったワケ

戻らないと覚悟したお金

結婚が決まり、相手の家で結納を交わす日がやってきました。結納金の準備は前もって母に頼んであったので、私は当日まで心配していませんでした。

ところが、出かける直前のことです。結納の品の包みを抱えた母が、玄関で私を呼び止めました。

「結納金ね、まだ用意してないのよ」

「えっ、今日だよ? 前にお願いしたよね」

「もちろん覚えてたわよ。途中で銀行に寄ればいいと思って」

あまりにあっさりした返事に、私は言葉を失いました。慌てて車を出し、母と一緒に道沿いの銀行へ向かいました。

ところが、ATMで必要な額を引き出そうとしても、途中で操作が進みません。1日に引き出せる金額には上限があり、母の口座からは全額を用意できなかったのです。

「どうしよう、足りないわね……」

母はしばらく画面を見つめ、私に言いました。

「あんたのカードでも下ろせない?」

結局、足りない分は私の口座から出しました。自分の結納金なのに、自分で立て替えることになるとは思ってもいませんでした。

「この分は、あとでちゃんと返してよ」

「はいはい、そのうちね」

助手席の母は、どこまでも気楽な様子です。運転しながら私は、あのお金は戻ってこないかもしれないと、半ば諦めていました。

のし袋を受け取った瞬間

結納の席は、婚約者の家の和室に用意されていました。私と母が並んで正座し、向かいには和装の婚約者と、その父が座っています。

こちらからの結納金が納められ、儀式はおごそかに進みました。やがて婚約者の父が、のし袋を両手で持ち、私のほうへ差し出しました。

「こちらからも、お納めください」

結納返しでした。その瞬間、今朝の銀行での出来事が頭に浮かびました。

もちろん、母に立て替えたお金が返ってきたわけではありません。けれど、ほんの少し前に手放したお金が「ただいま」と戻ってきたように感じられ、急におかしくなったのです。

「ありがとうございます。頂戴いたします」

何とか声は落ち着かせましたが、口元が緩みそうになります。笑ってはいけないと思えば思うほど、顔を上げるのが大変でした。

結納のあと、控えの間で婚約者が私の顔をのぞき込みました。

「ねえ、さっき笑いそうになってたでしょ?」

「分かった?」

私が今朝の銀行での出来事を話すと、婚約者は声を上げて笑いました。

「じゃあ、あのお金に『おかえり』って言わなきゃね」

そこへ母が戻ってきて、何事もなかったように言いました。

「よかったじゃない、戻ってきて」

立て替えた分を返してもらう話は、まだ終わっていません。それなのに、あまりに堂々とした母の一言に、私もとうとう笑ってしまいました。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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