「客に分かるように書いといてくれないと困るよ」ポイント対象外の洗剤で怒った男性。店長が棚を確認したあと変えたもの
震える指先と、止まらない声
冬の夕方、夕飯に足りないものを買うため、私はドラッグストアに立ち寄った。仕事帰りらしい人も多く、レジには3〜4人ほどの列ができていた。
順番が近づいたころ、私のすぐ前にいた60代くらいの男性が、急に声を上げた。
「ちょっと待って。これ、ポイント入ってないじゃないか」
レジを担当していた若い男性店員さんが答えた。
「申し訳ありません。こちらの洗剤は、ポイント対象外の商品になっております」
すると男性は眉をひそめ、少し身を乗り出した。
「対象外?そんなの聞いてないよ」
「すみません。一部の商品が対象外になっていまして…」
「だったら、もっと分かるように書いといてくれよ。普通、ポイントつくと思うだろ」
店員さんは「申し訳ありません」と頭を下げたが、男性の声は収まらなかった。
「こっちはポイントがつくと思って買ってるんだよ。こんなの、会計のときに言われても分からないだろ」
男性の大きな声は、その後も3分ほど続いた。
店員さんは何度も確認していたが、レジに置いた手の指先がかすかに震えているのが見えた。後ろに並ぶ人たちも困ったように黙り、列はそのまま止まっていた。
値札の横にあった小さな表示
そこへ、騒ぎに気づいた店長が奥から出てきた。
「お待たせして申し訳ありません。どうされましたか」
男性は店長を見るなり、先ほどの洗剤を指さした。
「これ、ポイントつかないって言うんだよ。そんなのどこに書いてあるんだって話だよ」
店長は店員さんにも短く事情を確認してから、男性に向き直った。
「分かりました。売り場の表示を一緒に確認してもよろしいですか」
男性は少し不満そうな表情のまま、店長と洗剤売り場へ向かった。棚はレジから見える位置にあり、並んでいた私からも二人の様子が分かった。
店長は値札の横にある小さな紙を指さした。
「こちらです。ここに『ポイント対象外』と表示しています」
男性は顔を近づけるようにして紙を見ると、すぐに言い返した。
「いや、こんな小さいの見えるわけないだろ」
店長も改めて表示を見ると、少し間を置いてうなずいた。
「そうですね。表示はあるんですが、確かにこれだと気づきにくいかもしれません」
男性はまだ納得しきれない様子で、紙を指さした。
「だから言ってるんだよ。客に分かるように書いといてくれないと困るよ」
「分かりました。表示は見直します。ただ、こちらの商品がポイント対象外であること自体は変わりませんので、そこはご了承ください」
店長が落ち着いた声で伝えると、男性はしばらく黙って棚を見ていた。
「…分かったよ。じゃあ、そのままでいい」
男性は袋を持って足早に店を出ていった。
「ちゃんと対応できてたから」
男性がいなくなると、店長は若い店員さんのそばへ戻った。
「大丈夫?」
店員さんは少し固い表情のまま、「はい」と答えた。
店長は声を落として続けた。
「さっきの説明で間違ってないよ。ちゃんと対応できてたから」
店員さんは一瞬うつむき、それから「ありがとうございます」と小さく返した。張りつめていた肩から、少し力が抜けたように見えた。
次に並んでいた年配の女性も、会計の前に「大変だったわね」とそっと声をかけていた。
私も会計を終え、出口へ向かおうとしたときだった。
先ほどの洗剤売り場を見ると、店長が小さな「ポイント対象外」の紙を外していた。そして、ひと回り大きな紙に同じ内容を書き直し、値札のそばへ貼り直していた。
男性の怒鳴り方には、見ているこちらまで緊張した。それでも店長は、店員さんの説明が間違っていなかったことはきちんと伝えながら、「表示が分かりにくい」という指摘まで否定しなかった。
誰かを言い負かして終わるのではなく、必要なところはその場で直す。店長のそんな対応が、帰り道まで印象に残っていた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














