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2026.10.08(Thu)

「雨の山道を、タクシーが5分で来るはずない」山寺の階段で震えて待った私が、ライトの光を見た瞬間

「本当に10分で来た」土砂降りの山寺で震えて待った私→タクシー運転手を尊敬したワケ

土砂降りの山道を引き返す

60代の私は、妻と山の中腹にある古いお寺へお参りに出かけました。帰りはふもとのバス停まで歩くつもりでしたが、山門を出たとたん、空が抜けたような土砂降りになりました。

「地図だと一本道だし、30分もかからないはずだよ」

「本当に大丈夫?」

「たぶん大丈夫。行ってみよう」

傘をさして、ぬかるんだ山道を下りはじめました。

ところが30分ほど歩いてもバス停は見えません。それどころか、道はだんだん細くなっていきました。

やがて、雨にぬれたイノシシ注意の看板が目に入りました。

「ねえ、この道で合ってるの?」

私も立ち止まり、もう一度地図を確認しました。

「……違う。どこかで曲がる場所を間違えたみたいだ」

引き返すしかありませんでした。

今まで下ってきた坂を、今度は2人で上ります。雨で足元は滑りやすく、草むらが揺れるたびに思わず身構えました。

手足も冷えきり、妻は私の腕につかまりながら、黙って一歩ずつ坂を上っていました。

坂の下に見えたライトの光

ようやくお寺の入口の石段の下まで戻り、私は携帯電話でタクシーを呼びました。

電話口では、「10分ほどで着きます」と言われました。

電話を切ると、ずぶぬれの妻が肩をすぼめています。

「10分って言ってたけど……雨の山道だぞ。そんなに早く来られるのかな」

「そうよね。道も細いし」

「しばらく待つつもりでいよう」

寒さで歯がかちかち鳴りました。2人で肩を寄せながら坂の下を見つめていると、本当に10分ほどたったころ、木立の向こうにライトが見えました。

「あなた、あれじゃない?」

光は少しずつ近づき、やがて一台のタクシーが坂を上ってきました。細いカーブが続く道でしたが、迷う様子もなく私たちの前までやってきて、ぴたりと止まります。

運転席の窓が下がりました。

「お待たせしました。この道、慣れてますんで」

運転手は何でもないことのように笑いました。

私と妻は顔を見合わせ、急いで後部座席に乗り込みました。おかげで2人とも、けがをすることなく無事にふもとまで帰ることができました。

山を下る途中、私は何度も運転手の背中を見ていました。さっきまで私たちが心細い思いをしていた山道を、慣れた様子で走っていく姿が頼もしく見えたのです。

すると妻が、小さく笑いました。

「あなた、さっきから運転手さんばかり見てるわね」

言われて初めて、自分がずっと尊敬のまなざしを向けていたことに気づきました。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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