「え…今の、見た?」朝食会場で素手で触ったパンを戻す人。迷った末にフロントへ伝えた結果
パンを取る手を見て、思わず目が止まった
旅行先のホテルで朝食会場に入ったときのことです。
案内された席からは、パンが並ぶ台がよく見えました。
しばらくすると、団体のお客さんが入ってきて、料理の前が急ににぎやかになりました。
その中で、私はある光景に目が止まりました。
パンの横にはトングが置いてあるのに、それを使わず、素手でパンを持ち上げている人がいたのです。
一つ手に取って裏返し、気に入らなかったのか、またかごへ戻します。別のパンを触って、また戻す人もいました。
「え…今の、見た?」
思わず小声で連れに聞くと、相手もパンの台を見ました。
「うん。手で触って戻してたね」
「あれ、ちょっと嫌じゃない?」
そう言いながらも、私はすぐには席を立てませんでした。
わざわざ言いに行くほどなのか、細かいことを気にしすぎなのかと迷ったからです。
けれど、そのあと小さな子どもを連れた家族がパンの台へ来ました。子どもが嬉しそうにかごを指さしているのを見て、やはり黙っているのは嫌だと思いました。
「あのパン、一度見てもらえませんか」
食事を終える前に、私はフロントへ向かいました。
「すみません、朝食会場のことでちょっといいですか」
スタッフが「はい、どうされましたか」とこちらを向きます。
「パンなんですけど…トングを使わずに、手で触って戻している人が何人かいて」
言いながら、自分でも少し言いづらくなりました。
「私が気にしすぎなのかもしれないんですけど、みんなが食べるものなので…あのパン、一度見てもらえませんか」
スタッフは表情を変えずに、「お知らせいただいてありがとうございます。会場を確認します」と答えてくれました。
席へ戻ると、連れが私の顔を見ました。
「言ってきた?」
「うん。ちょっと緊張した」
「でも、言ってよかったと思うよ」
その言葉を聞いて、少し肩の力が抜けました。
ほどなくしてスタッフがパンの台へ来て、かごの状態を確認していました。
その後、パンは新しいものに替えられ、台の前にはトングを使うよう案内が出されました。
しばらくはスタッフも近くに立ち、パンを取ろうとする人に「こちらのトングをお使いください」と声をかけていました。
さっき見かけた家族も再びパンの前に来ました。小さな男の子が母親に手伝ってもらいながら、一生懸命トングでパンを挟んでいます。
それを見て、私はようやくほっとしました。
「やっぱり、言ってよかったね」
連れにそう言われ、私は小さくうなずきました。
その場で誰かを注意する勇気はありませんでした。それでも、気になったことをホテルの人に伝えるくらいならできる。あの日は、それで十分だったのだと思います。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














