「今の時代、それ褒め言葉じゃないよ」久しぶりに会った孫を見て笑う祖母。だが、食卓の箸が一斉に止まった一言
正月の食卓で、箸の音が一斉に止まった
祖母の家の正月は、座卓の上がいつも渋滞している。
煮しめの大皿と、数の子の小鉢と、栓を抜いたばかりの瓶ビール。
人が集まると、この座卓はどうしても少し狭い。
台所から戻ってきた祖母が、私の隣にぺたんと腰を下ろした。
会うのは久しぶりで、座るなり私の顔をまじまじと見ている。母は向かいで取り皿を配り、叔父はもう二杯目を注いでいた。
「あらあ、ちょっと見ないうちに変わったわねえ」
「そう?自分じゃ全然分からないけど」
「きれいになったじゃない。ねえ、本当に」
祖母がうれしそうに言うので、私は少し照れながらビール瓶に手を伸ばした。
すると祖母は、さらに私を眺めてから言った。
「それに、お尻もずいぶん立派になって」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
座卓のあちこちで箸が止まり、叔父はコップを口元まで上げたままこちらを見ている。
いとこも数の子をつまんだ箸を宙で止めていた。
私が「え?」と笑うしかないでいると、向かいにいた母がすぐ口を挟んだ。
祖母は本気で褒めているつもりだった
「お母さん。今の時代、それ褒め言葉じゃないよ」
母の声には呆れたような笑いが混じっていた。
「えっ、なんでよ。褒めてるのよ、私」
祖母は心外そうな顔で母を見る。
「分かってる、分かってる。でも本人にいきなり『お尻が大きくなった』は、ちょっとね」
「あら…そうなの?」
祖母は今度は私の顔をのぞき込んだ。
「嫌だった?」
あまりに申し訳なさそうな顔をするので、私も吹き出してしまった。
「嫌っていうか…びっくりした」
「そうよねえ。ごめんね。でも本当に、悪い意味じゃないのよ」
「それは分かってるよ」
祖母にとっては、体つきがしっかりしたことも含めて、元気そうになったと褒めたかったらしい。悪気がないことだけは、慌てている顔を見れば十分伝わった。
それでも母は笑いながら念を押した。
「次からは『きれいになった』で止めときなよ」
「分かったわよ。じゃあ…きれいになったねえ」
祖母は私の肩をぽんとたたいた。
「はい。これならいい?」
「うん。それなら素直にありがとうって言える」
「難しいわねえ。褒めるのも気をつけなきゃいけないのね」
そこで叔父がとうとう吹き出し、いとこも笑い始めた。さっきまで止まっていた箸が、ようやく動き出す。
祖母もつられて笑いながら、私の取り皿に煮しめを次々とのせてきた。
「ほら、もっと食べなさい。まだあるんだから」
「おばあちゃん、今その流れでそれ言う?」
「これはいいでしょう。食べなさいって言っただけよ」
「それはまあ、いいけど」
今度は母まで声を上げて笑った。
祖母は何がそんなにおかしいのか分からないという顔をしながら、もう次の煮物を私の皿にのせていた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














