tend Editorial Team

2026.09.09(Wed)

「トイレで30分も寝てたんですか?」深夜のコンビニで寝る客。だが、相談した店長がぶつけた正論とは

「トイレで30分も寝てたんですか?」深夜のコンビニで寝る客。だが、相談した店長がぶつけた正論とは

午前三時、お手洗いの前で困っていた客

三十代のとき、深夜のコンビニで働いていた。その店には、夜になるとよく来る常連の男性がいた。

缶コーヒーを一本買い、雑誌を読んで朝近くまで過ごしていく人だった。

買い物はしていたし、以前はほかのお客さんに迷惑をかけることもなかったので、私たちも強く声をかけることはなかった。

ただ、その週に入ってから様子が変わった。

3日続けて、雑誌の棚の近くで座り込んだまま眠ってしまったのだ。

「お客様、すみません。ここで寝るのはちょっと…」

声をかけると、男性は眠そうに目を開けた。

「ああ、ごめん、ごめん。起きてるよ」

そう言って立ち上がるものの、しばらくするとまた壁にもたれて目を閉じている。

私もレジや品出しがあるため、ずっと見ているわけにはいかなかった。

その夜、午前三時を過ぎたころだった。

若い男性のお客さんが、お手洗いの前から困った顔でレジへ戻ってきた。

「あの、すみません。トイレって一つだけですよね?」

「はい。どうされました?」

「さっきからずっと使用中で…。もう30分近いと思うんですけど」

「30分ですか?すみません、ちょっと確認してきます」

慌てて扉の前へ行くと、表示はまだ赤いままだった。

軽くノックする。

「お客様、店員です。大丈夫ですか?」

返事がない。

もう一度、少し強めにノックした。

「大丈夫ですか?お返事いただけますか?」

すると扉の向こうから聞こえてきたのは、うめき声ではなく、規則正しいいびきだった。

「お客様、申し訳ないんですが、起きてください」

少しして、中から物音がした。

「…ああ。寝ちゃったか」

出てきたのは、あの常連の男性だった。

「すみません。ほかのお客様がお待ちなので、トイレで眠るのは困ります」

私がそう伝えると、男性は気まずそうに頭をかいた。

「悪かったよ。ちょっと座ったら眠くなっちゃってさ」

そして軽く手を上げると、また雑誌の棚のほうへ歩いていった。

待っていたお客さんは男性の背中を一度見てから、何も言わずにお手洗いへ入った。

「もう、こっちも見て見ぬふりはできないな」

始発が動き始めるころ、私は店長に電話した。

ここ数日、男性が店内で眠っていたこと。それまで何度か声をかけていたこと。

そして今夜は、お手洗いに入ったまま眠り、ほかのお客さんを30分近く待たせてしまったことを伝えた。

「そんなに長く入ってたのか」

「はい。お客さんに言われるまで、私も気づけなくて…」

「いや、それを一人でずっと見てろっていうのも無理だよ」

店長は少し黙った。

「でも、ずっと続いてるんだよな?」

「続いてます。声をかければ起きてくれるんですけど、また寝ちゃうんです」

電話の向こうで、店長が小さく息を吐いた。

「わかった。今日、店に行くよ。もう見て見ぬふりはできないな。本部にも相談してみる」

昼前、店長は店へ来た。

これまでの様子をもう一度確認したあと、本部へ電話を入れていた。

その日の夕方、店長が事務所から持って出てきたのは一枚の紙だった。

深夜の長時間滞在や、店内で眠る行為は控えてほしいという内容が書かれていた。

「今まで曖昧にしてたこっちにも責任はあるから。これからはちゃんと伝えよう」

店長はそう言った。

その晩、男性がいつものように店へ入ってくると、店長がレジから声をかけた。

「すみません、少しお話いいですか」

男性は不思議そうな顔をした。

「俺?何かした?」

「ここ何日か、店の中で寝てますよね。昨日はトイレでも眠ってしまって、ほかのお客様を長く待たせてしまったんです」

男性は一瞬黙った。

「ああ…昨日のことか」

「これからは店内で寝たり、長い時間過ごしたりするのはやめていただきたいんです」

責めるような口調ではなかったが、店長の声ははっきりしていた。

男性はしばらく張り紙を見ていた。

「…そっか。迷惑かけてたんだな」

「すみません。でも、お店としてはそうさせてください」

「わかったよ」

男性はそれ以上言い返さず、いつもの缶コーヒーを一本だけ買った。

「じゃあ、今日は帰るわ」

そう言って店を出ていった。

翌朝、私が勤務を終えるころには、入口の自動ドアの内側に同じ内容の張り紙が貼られていた。

何度も来ていた人だからこそ、どこまで声をかけるべきなのか迷っていたのだと思う。それでも、ほかのお客さんにまで影響が出たことで、店として線を引く必要が出てきた。

あの張り紙を見るたび、もっと早く相談してもよかったのかもしれないと、私はしばらく考えていた。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.10.16(Fri)

「来年度は仕事が忙しいので」と役員のくじを引かなかった母親。翌年も帰ろうとした彼女に、会長が説明した新しい決まり
tend Editorial Team

NEW 2026.10.16(Fri)

「玄関に落ちた実くらい、お宅で掃いてよ」隣家の木の実に悩んだ私。足を滑らせた私のお願いを断った隣人が、翌週にとった行動
tend Editorial Team

NEW 2026.10.16(Fri)

「また隣の部屋と間違えました」毎月夜11時にドアノブを回す男性。だが、フロントで知った事実に背筋が凍った
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.03.30(Mon)

「民間の警護を考えるしかない」「選択肢として必要」と共感の声相次ぐ。カズレーザー、池袋でのポケモンセンター殺人事件に言及
tend Editorial Team

2026.07.09(Thu)

「まだ1週間あるでしょ」引越しの準備をしない夫。だが、妻の秘策で夫が重い腰をあげた瞬間
tend Editorial Team

2026.10.05(Mon)

「お菓子と食事の分だけだよ」彼女が払う買い物に私用品まで入れる彼、レジへ向かう前に告げられた一言
tend Editorial Team