「順位は1つも上がらなかったけど、最後まで走った」運動会で転んだ子に、自然と広がった拍手
転んだ子が立ち上がると、声が飛んだ
秋の運動会、午前の最後の種目だった学年ごとのかけっこでのことです。
走っていた一人の子が、途中で転んでしまいました。
同じ組の二人は、そのままずいぶん先へ進んでいます。
すると、次の組の列から一人の子が駆け寄り、転んだ子が立ち上がるのを手伝いました。
ゴールの白い線までは、まだ半分近く残っています。
膝に土をつけたまま立ち上がった子に、トラックの外から声が飛びました。
「ゆっくりでいいよー!」
その子は少し間を置くと、もう一度走り始めました。前の二人との距離は大きく開いていて、追いつくのは難しそうでした。
それでも、白い線へ向かって走り続けます。
最初に拍手をしたのは、テントの外に立っていた上の学年らしい子でした。乾いた音が二つ、三つと続きます。
すると、すでにゴールしていた同じ組の子も振り返りました。
「がんばれ!」
その声につられるように、トラックの外側から次々と声が上がりました。
「がんばれー!」
声はそろっていません。それでも途切れることなく、やがて保護者席からも拍手が広がりました。
誰かが号令をかけたわけではありません。気づけば私もカメラを膝に置いたまま、手を叩いていました。
順位よりも目に残ったもの
その子が白い線を越えた瞬間、ひときわ大きな拍手が起きました。ゴールの係をしていた先生も、記録の紙を持ったまま拍手をしています。
私は思わず、隣にいた保護者に言いました。
「順位は1つも上がらなかったけど、最後まで走ったね」
すると、その人がコースの外を見ながら言いました。
「さっき助けに行った子、次の組だよね」
言われて見ると、その子は自分の順番を待つ列へ戻っていました。自分の出番が迫っているのに、転んだ子を見て駆け寄ったのです。
やがて次の組がスタートし、その子も走りました。けれど、そのとき何位だったのかは、私はもう覚えていません。
最後の組がゴールすると、放送が入りました。
「三年生のかけっこ、これで終わりです」
午前の競技が終わっても、私の頭に残っていたのは順位ではありませんでした。
午後から、見る場所が少し変わった
午後の競技が始まると、私は自分の子どもを探しながら、時々スタートを待つ列にも目を向けるようになりました。
走っている子だけではなく、これから走る子たちの姿も見るようになったのです。
あの日、私の目に強く残ったのは、転んでも最後まで走った子と、自分の順番を待ちながら迷わず駆け寄った子でした。
運動会というと、つい順位や速さに目が向きます。
でも、あの日の拍手を思い出すたびに、それだけではないものを見せてもらった気がします。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














