「その運転手を呼んでくれ!」あおり運転の苦情で営業所に押しかけた男性。だが、窓の外を見て言葉を失った瞬間
突然押しかけてきた男性
私は運送会社の営業所で、事務の仕事をしています。
入口近くの受付で伝票を整理したり、電話に対応したりするのが主な仕事です。
奥には所長の机があり、窓からは駐車場に停めてあるトラックが見えます。
ある日の午後、突然ドアが勢いよく開き、60代くらいの男性が入ってきました。
「おい!おたくのトラック、どうなってるんだ!」
男性は受付の台をたたきながら、大声で怒鳴り始めました。
驚きながらも事情を尋ねると、1時間ほど前、国道を走っていたところ、後ろからトラックにぴったりつけられたというのです。
車体に書かれていた名前を頼りに会社を調べ、ここまで来たそうです。
「それは怖かったですね。何時ごろ、どのあたりでしたか?」
「1時すぎだよ!橋の手前!緑のでかいトラックが、ずっと後ろにくっついてきたんだ!」
私は急いでメモを取りました。
ただ、一つ気になることがありました。
うちの会社のトラックは、すべて白色なのです。
「あの、すみません。うちのトラックは……」
そう説明しようとした瞬間、男性の声がさらに大きくなりました。
「言い訳するな!トラックの名前は見たんだ、社長を出せ!」
「こっちは怖い思いをしたんだぞ!家族が乗ってたらどうするんだ!」
男性の怒鳴り声は10分ほど続きました。
怖い思いをしたことには同情しますが、こちらの話を聞いてもらえず、ペンを持つ手が震えてしまいました。
所長が確認した1枚の運行表
すると、奥の机にいた所長が立ち上がり、私の隣に来ました。
「お話は聞こえていました。社長は本社におりますが、この営業所の責任者は私です。まず、確認させてください」
所長は私のメモを受け取ると、奥の机に戻りました。
それから5分ほどして、1枚の運行表を持って戻ってきました。
「お待たせしました。午後1時すぎ、橋の手前ということでしたね」
「そうだよ!だから、その運転手を呼んでくれって言ってるだろ!」
「今、うちの車の記録を確認しました。その時間帯は別の町で配達していた記録になっています。こちらが配達先への到着時刻です」
所長が運行表を差し出すと、男性は顔を近づけて確認し始めました。
さらに所長は、窓の外を指さしました。
「それと、トラックは緑色だったんですよね。うちの車は全部白なんです。あちらを見ていただけますか」
窓の外には、白いトラックが並んでいました。
男性は窓の外を見て、もう一度運行表に目を落としました。
「あれ?緑だったんだけどな…」
さっきまでの怒鳴り声が嘘のように小さくなりました。
「お話を聞く限り、うちの車とは特徴が違うようです。隣の町に名前のよく似た運送会社もあるんですが…」
所長はそこで一度言葉を区切りました。
「ただ、そちらの車だったかどうかは分かりません。よろしければ連絡先をお書きします」
男性は何も言わず、小さくうなずきました。
そして、所長から連絡先を書いた紙を受け取ると、私のほうに向き直りました。
「……悪かったね。あんたに怒鳴ることじゃなかった」
そう言って、深く頭を下げたのです。
「いえ……。お気をつけてお帰りください」
男性は小さくうなずき、静かに営業所を出ていきました。
所長は私の机に戻ってくると、先ほどのメモを置きました。
「時間と場所をちゃんと聞いてくれてたから、確認しやすかったよ。助かった」
メモには、緊張でゆがんだ文字が残っていました。
まだ少し手が震えていましたが、所長の言葉を聞いて、ようやくほっとしました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














