「勝手に捨てないでって言ってるでしょ!」共用廊下を荷物でふさぐ住人が、管理会社の10日以内の撤去通知に黙った日
ベビーカーが通れない共用廊下
ある日の夕方、マンションのエレベーターを降りると、廊下の奥に住む若いお母さんが、ベビーカーを前に困っていました。
原因は、私の部屋の2つ隣に置かれた古い棚と段ボールです。共用廊下の半分ほどをふさいでいて、ベビーカーが通れなくなっていたのです。
「すみません。ここ、どうしても通れなくて…」
私も手を貸し、2人でベビーカーの前輪を持ち上げながら斜めに動かして、ようやく通ることができました。
最初は段ボール1箱だけだった荷物も、いつの間にか古い棚や自転車の部品まで増えていました。
そこに住んでいるのは、50代くらいの女性です。
以前にも「部屋が狭いんだから、前に置くくらいいいでしょ」と話していたことがありました。
次の日曜日、女性がまた荷物を廊下に出していたので、思い切って声をかけました。
「あの、すみません。廊下が狭くなっているので、荷物を片付けてもらえませんか?」
すると女性は、不機嫌そうにこちらを向きました。
「ちょっと置いてるだけよ。そのうち片付けるから」
「でも、ベビーカーが通れなくて困っている方もいるんです」
「だから、あとで片付けるって言ってるでしょ!」
「それなら、いつごろ片付けてもらえますか?」
女性は棚に手をかけ、さらに声を大きくしました。
「何よ!勝手に処分するつもり?他人の物を勝手に捨てないでよ!」
「いえ、そんなことは言ってません。ただ、通れるようにしてほしいんです」
「そんな細かいことばっかり!あなた、よっぽど暇なのね!」
話を聞いてもらえそうになく、私はそれ以上言い返せませんでした。
近くの部屋から物音は聞こえましたが、誰も出てきません。困っているのは私だけではないのに、まるで私が悪いことを言っているような気分になりました。
結局、その晩、廊下の荷物を撮影し、日付を添えて管理会社に送りました。
管理会社が貼った1枚の通知
数日後の土曜日、管理会社の40代くらいの男性担当者がやって来ました。
担当者は荷物の前の壁に、1枚の通知を貼りました。
そこには「共用廊下に置かれた私物は、10日以内に撤去してください。期限までに改善されない場合は、管理規約に基づき対応を検討いたします」と書かれていました。
私は自分の部屋の前から、その様子を見ていました。
すると、女性の部屋のドアが開きました。女性は通知を見るなり、担当者に詰め寄りました。
「ちょっと!これ、どういうこと?勝手に捨てないでって言ってるでしょ!仮に置いてるだけなのよ!」
担当者は落ち着いた様子で答えました。
「勝手に処分するという話ではありません。まずは10日以内に、ご自身で片付けていただくようお願いしています」
「だから、そのうち片付けるって言ってるじゃない!」
すると担当者はファイルを開き、記録していた写真を女性に見せました。
「こちらでも3か月前から状況を確認しています。荷物が少しずつ増えていることも記録に残っています」
女性は写真を見つめたまま、眉をひそめました。
「でも、うちの部屋の前でしょ?別にいいじゃない」
「お部屋の前でも、ここは共用廊下です。ほかの方も通りますので、荷物は置いたままにできないんです」
担当者がそう説明すると、女性は不満そうに口を結びました。
そのとき、廊下の奥のドアが開きました。
顔を出したのは、以前ベビーカーで困っていたお母さんと、そのご主人です。
お母さんは少しためらいながらも、口を開きました。
「あの……うちも困っていたんです。ベビーカーが通れなくて。片付けてもらえると、本当に助かります」
隣にいたご主人も、黙ってうなずいていました。
女性は一瞬言葉に詰まり、壁の通知に目を向けました。何か言いかけては口を閉じ、先ほどまでの勢いはありません。
結局、何も言い返さず、そのまま部屋へ戻っていきました。
そして翌朝、廊下にあった荷物はひとつ残らずなくなっていました。
広くなった廊下を、あのお母さんがベビーカーを押してまっすぐ通っていきます。私に気づくと、小さく会釈してくれました。
直接お願いしたときは聞いてもらえませんでしたが、管理会社から正式に通知されたことで、ようやく片付けてもらえたようです。
何よりうれしかったのは、誰もが気兼ねなく廊下を通れるようになったことでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














