「柔軟に対応してよ」ポイントカードを出し忘れた客。だが、最後まで変えなかった店長の対応
動かなくなった夕方のレジ
1年前、近所のスーパーで夕飯の材料を買って、レジの列に並んでいた。私の前では、60代くらいの女性客が会計を終えたところだった。
レシートを受け取った女性客は、そこで何かを思い出したようにバッグを開け、ポイントカードを取り出した。
「あ、これ出すの忘れてた。今からポイントつけてもらえる?」
若い女性店員さんは、一瞬困ったような顔をした。
「申し訳ありません。お会計が終わったあとは、ポイントをお付けできない決まりなんです」
すると女性客の表情が険しくなった。
「え?だって今、会計したばっかりでしょ。忘れただけなんだから、それくらいやってくれてもいいじゃない」
店員さんは少し戸惑いながらも、もう一度説明した。
「すみません。私の判断で、あとからお付けすることはできなくて…」
「だから、そんな堅いこと言わなくてもいいでしょう」
女性客の声がさらに大きくなった。
「本当に気が利かないわね。さっきから言ってるでしょ。柔軟に対応してよ」
店員さんは「申し訳ありません」と繰り返したが、次第に声が小さくなっていった。
10分ほどたっても女性客はレジの前から動かず、いつの間にか列は5人を超えていた。私も何か言えればと思ったが、かえって話をこじらせそうで、かごの持ち手を握ったまま黙っていた。
店長が変えなかった対応
そこへ、奥から店長が出てきた。店員さんから短く事情を聞くと、女性客のほうへ向き直った。
「お待たせして申し訳ありません。ポイントカードを出し忘れたとのことですね」
女性客はすぐに答えた。
「そうよ。会計したばっかりなのに、この人ができないって言うの。カードを出し忘れただけなのよ?」
店長は落ち着いた声で返した。
「申し訳ありません。ただ、会計後のポイント付与はできない決まりになっております」
「だから、今回は忘れただけだって言ってるでしょう」
「はい。ただ、今回だけという対応をしてしまうと、ほかのお客様にも同じご案内ができなくなってしまいますので…」
女性客はまだ納得できない様子だった。
すると店長は、女性客が持っていたレシートを指した。
「恐れ入りますが、こちらの裏面もご確認いただけますか」
女性客がレシートを裏返すと、そこには会計時にカードを提示した場合にポイントを付与するという案内が印字されていた。
女性客はその一文をしばらく見つめたあと、ため息をついた。
「……分かったわ。もういい」
店長はそれ以上言い返さず、「申し訳ありません」と頭を下げた。
そして隣のレジを開け、待っていた人たちへ声をかけた。
「長くお待たせして申し訳ありません。こちらのレジもどうぞ」
私の後ろにいた人たちが、ほっとした表情で隣へ移っていった。
女性客は買い物袋を持つと、そのまま店を出ていった。
女性客の姿が見えなくなると、店員さんは緊張がほどけたように小さく息をついた。それでもすぐに顔を上げ、私に向かって言った。
「大変お待たせしました。袋はご入り用ですか?」
ついさっきまで強い口調で責められていたのに、いつもの接客に戻ろうとする店員さんの姿が、今でも印象に残っている。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














