「いつもの1キロ、今日もありますか?」2日おきに唐揚げを買う常連客。決まった時間に来た常連客の、今も答えのない謎
2日おきに現れる常連客
学生のころ、僕は24時間営業のスーパーで深夜のアルバイトをしていた。
夜も遅くなると客足はぐっと減り、レジの合間に商品の補充や棚の整理をするのがいつもの仕事だった。
働き始めて間もないころ、一人の男性がレジで僕に声をかけた。
「すみません。いつもの1キロの袋、今日もありますか?」
何のことかわからず、僕は聞き返した。
「1キロの袋…ですか?」
男性は少し笑って、冷凍食品売り場のほうを指さした。
「唐揚げですよ。大きい袋の」
その店では、冷凍食品売り場に1キロ入りの唐揚げを置いていた。
「ああ、すみません。確認してきます」
売り場を見ると棚には一袋だけ残っていたので、そのことを伝えた。
「今日は一袋だけあります」
「わかった」
男性はそう言って、自分で袋をレジまで持ってきた。
それから僕は、その男性がほぼ2日おきに店へ来ることに気づいた。
買うのは決まって1キロ入りの冷凍唐揚げを一袋か二袋。ほかの商品を一緒に買うことはほとんどなかった。
来る時間もだいたい同じだったので、夜勤の仲間とは男性が帰ったあとに、こんな話をするようになった。
「今日も来たね」
「うん。あれだけ買って、何に使うんだろう」
店長も知らなかった使い道
ある日、休憩中に店長へ聞いてみた。
「あの唐揚げをいつも買う人、何に使ってるか知ってます?」
店長は少し考えてから首を振った。
「知らないなあ。飲食店でもやってるのかなとは思ったけど」
「やっぱり気になりますよね」
「まあね。でも、お客さんにわざわざ聞くことでもないしな」
確かにその通りだった。
店の仕入れにしては、毎回一袋か二袋という量は中途半端な気もする。
かといって、2日おきに家で食べるにはかなり多いようにも思えた。
大人数の家族なのか、誰かに配っているのか。それとも本当に小さな店で使っているのか。
考えるほど気になった。
ある夜、会計をしながら「そんなにたくさん、何に使うんですか」と聞きかけたこともある。
けれど、結局言えなかった。
「ありがとうございました」
僕が商品を渡すと、男性はいつものように軽く頭を下げた。
「どうも。また来ます」
最後まで聞けなかったこと
僕がそのアルバイトを辞める日まで、男性は変わらず店へ来ていた。
最後の夜勤にも、いつもの時間に姿を見せた。
「今日、1キロのやつあります?」
「ありますよ。今日は二袋残ってます」
「じゃあ、一袋だけもらいます」
何度も繰り返した、いつものやり取りだった。
翌朝、次の夜勤に入る後輩へ引き継ぎをしているとき、その男性のことも伝えた。
「2日おきくらいに、1キロの唐揚げを買う人が来るよ」
後輩はすぐに聞いた。
「そんなに買って、何に使うんですか?」
僕は笑って首を振った。
「それが、結局わからなかったんだよ」
あれから十数年がたつ。
男性が2日おきに持ち帰っていたあの唐揚げを、誰が、どこで食べていたのか。
今でもたまに冷凍食品売り場で大きな唐揚げの袋を見ると、あの人のことを思い出す。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














