「いつも来てるんだから」予約時間前の案内を求めた常連客。カウンターを叩いたあと、店長が返した一言
受付に立つたびに身構えた人
40代に入ったころ、予約制のお店の受付でパートをしていた。
常連の中に、どうしても身構えてしまう50代くらいの男性がいた。
男性は予約時間より早く来ては、すぐに案内してほしいと言ってくることがあった。
「申し訳ありません。まだ前のお客様がいらっしゃるので、もう少しお待ちいただけますか」
そう伝えると、男性は決まって不満そうな顔をした。
「また待つの?いつも来てるんだから、少しくらい融通きかせてよ」
「順番にご案内していますので…」
「それは分かってるけどさ。もう何度も来てるでしょ」
声が大きくなると、待合にいるほかのお客さんまでこちらを見る。私は受付に立つたび、今日は何もなければいいのにと思うようになっていた。
混み合った週末の午後、その男性がまた予約時間より早くやってきた。
いつもどおり順番を待ってもらうよう伝えると、男性はカウンターへ身を乗り出した。
「ちょっと待ってよ。俺の顔、覚えてないの?」
「もちろん覚えています。ただ、先にご予約のお客様がいらっしゃいますので」
そう言うと、男性は手のひらでカウンターを強く叩いた。
「もういい。店長を呼べ。あなたじゃ話にならない」
私を指さした男性と、店長の一声
奥にいた店長が出てくると、男性は少しだけ声の調子を落とした。
「店長さん、この人さ、さっきから待てって言うばっかりで。こっちは何度も来てる客なのに」
そう言いながら、男性は私のほうを指さした。
私が説明しようとすると、店長がこちらを見て小さくうなずいた。
「大丈夫。声が聞こえていたから、やり取りは分かっています」
男性は一瞬黙った。
店長はこれまでの対応記録を確認しながら、落ち着いた声で続けた。
「以前にも早めに来られたことがありますよね。そのときも、予約の順番でご案内しています」
「でも、いつも来てるんだから、それくらい何とかならないの?」
男性はまだ納得できない様子だった。
店長は少し間を置いてから答えた。
「いつも来ていただいているのはありがたいです。でも、先に予約されている方を飛ばすことはできません」
「…常連でも?」
「はい。そこは、どのお客様も同じです」
店長の声は穏やかだったが、男性はそれ以上何も言わなかった。しばらく黙ったあと待合の椅子へ移り、自分の名前が呼ばれるまで待っていた。
その日の閉店後、店長は対応の記録を残しながら、私に声をかけた。
「今日は大変だったね」
気になっていた私は、思わず聞いた。
「私、何か言い方まずかったですか?」
店長は首を振った。
「いや、ちゃんと説明できてたよ。次からあの方が来たら、私が受付に出る。あなたは今までどおりで大丈夫」
その言葉を聞いて、ようやく肩の力が抜けた。
それから男性が来るたびに店長が受付に立った。案内する内容は変わらず、予約の順番どおりだった。
やがて男性の予約はいつの間にか入らなくなり、受付のカウンターを叩く音も聞かなくなった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














