「これだけなんだから先でいいだろ」コンビニで横入りした男性。店員が困るなか、店長が案内した最初の客
列の先頭に入ってきた男性
夏の夜、残業帰りにコンビニへ寄った。
お弁当の棚で少し迷ってからレジへ行くと、私の前には女性が1人、後ろには作業着姿の男性が1人並んでいた。
会計を待っていると、60代くらいの男性が雑誌の棚のほうから歩いてきた。
男性は列には並ばず、そのまま先頭の女性の前へ入り、缶コーヒーと新聞をレジ台に置いた。
女性は一瞬、驚いたように男性を見た。それから少しためらいながら声をかけた。
「すみません、並んでますよ」
男性は振り返ったが、列へ戻ろうとはしなかった。
「悪いけど、こっちは急いでるんだよ。これだけなんだから、先にいいだろ」
そう言って財布を取り出す男性に、レジの若い女性店員さんも戸惑った顔をした。
「申し訳ありません。皆さんお待ちですので、最後尾からお願いできますか」
男性は商品をレジ台に置いたまま動かなかった。
「いや、だから急いでるんだって。すぐ終わるから」
店員さんは困ったように列へ目を向けてから、もう一度伝えた。
「恐れ入りますが、順番にお並びいただけますか」
すると男性は、少しいら立った声を返した。
「もういいから、早く会計してくれよ」
後ろにいた作業着姿の男性が、小さく息を吐いた。私も手にしていたお弁当を持ち直しながら、どうなるのだろうとレジを見ていた。
もう一台のレジが開いた
そのとき、隣のレジから操作音が聞こえた。
見ると、奥から出てきた店長がもう一台のレジを開けていた。
「お待たせしました。お並びいただいていたお客様から、こちらでお会計します」
店長は、もともと列の先頭にいた女性へ声をかけた。
「こちらへどうぞ」
女性は割り込んだ男性をちらりと見た。少し迷っているようだったが、店長がもう一度レジを示した。
「大丈夫ですよ。こちらでお会計します」
「あ、はい。お願いします」
女性は小さくうなずき、店長のいるレジへ移った。
それを確認すると、若い店員さんは割り込んだ男性に声をかけた。
「申し訳ありません。順番にご案内しますので、少々お待ちください」
男性は眉を寄せた。
「俺はこれだけなんだけどな…」
それでも店員さんが会計を始めなかったため、それ以上は何も言わなかった。
女性の会計が終わると、店長は私を呼んだ。
「お次のお客様、どうぞ」
私の会計が終わったあとには、後ろに並んでいた作業着姿の男性が呼ばれた。
そして、もともと並んでいた3人の会計がすべて終わってから、ようやく割り込んだ男性の番になった。
男性は缶コーヒーと新聞を受け取ると、何も言わずに足早に店を出ていった。
急いでいた事情は本当にあったのかもしれない。それでも、先に並んでいた人たちを飛ばせる理由にはならない。
店長が声を荒らげることなく、ただ元の順番どおりに案内したことで、その場はそれ以上もめずに済んだ。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














