「家で数えてきましたから」大量の小銭で会計した女性。だが、袋の中身が1円もずれていなかった
布の袋から出てきたのは、1円玉と5円玉だった
私が十代のころ、ハンバーガー店でアルバイトをしていたときの話です。
夕方の混雑が少し落ち着いたころ、年配の女性のお客さまが来店しました。注文を終えると、布の小さな袋をカウンターに置きました。
「1円玉と5円玉ばかりなんですが、これで払っても大丈夫ですか」
袋の中には、細かい硬貨がぎっしり入っていました。私はまだ働き始めて日が浅く、自分で判断していいのか分かりません。
そこで近くにいた先輩に確認すると、少し時間がかかることをお客さまにも伝えたうえで、受け取って構わないとのことでした。
女性も「大丈夫ですよ」と言い、そのままカウンターの前で待ってくれました。
二度数えても、金額は同じだった
私は硬貨を数えるトレーに、一枚ずつ並べ始めました。途中で分からなくならないよう、十枚ずつのまとまりにします。
想像していた以上に時間がかかりました。
ようやく全部を数え終え、電卓で合計を出します。ところが表示された数字を見て、私は念のため最初からもう一度数え直しました。
二度目も同じでした。
注文された商品の代金と、袋に入っていた硬貨の合計が、ぴったり同じだったのです。
「数えたらぴったりでした。」
思わずそう伝えると、女性は驚くでもなく、少し笑いました。
「そうでしょう。家で数えてきましたから」
そこで初めて、私は当然のことに気づきました。女性は財布にたまった小銭を適当に持ってきたわけではなかったのです。
月に一度のために、家で数えていた
女性は、普段から1円玉や5円玉を少しずつ袋に入れているのだと教えてくれました。
そしてこの店へ来る日は、注文するものの代金になるよう家で数え、必要な分だけ別の袋に入れて持ってくるのだそうです。
「今日はこれを使おうと思って」
そう言われて、さっきまで大量の小銭にしか見えていなかった袋が、少し違って見えました。
会計を終え、女性は商品を入れた紙袋を受け取ると、「ありがとう」と頭を下げて店を出ていきました。
そのあと、私は先輩に「あのお客さま、前にも来たことがあるんですか」と聞きました。
「うん。月に一度くらい来はるよ」
先輩にとっては、すでに見慣れたお客さまだったようです。
数えている最中の私は、正直なところ「まだこんなにある」とばかり考えていました。
でも女性にとっては、家で一度きちんと数えたお金を、予定どおり使いに来ただけだったのでしょう。
あれからずいぶん経ちますが、小銭をまとめて数えるとき、私は今でも十枚ずつ並べます。そのたびに、あの布の袋と、ぴったりそろった数字を思い出します。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














