「食べ物のにおいが少し苦手で…控えてもらえると助かるんですが」電車で食べようとした駅弁。だが、子供の何気ない一言で空気が一変
駅弁の蓋を開けたところで、声をかけられた
休みを取って一人旅に出た日のことです。旅行客も多い少し長めの区間を走る電車で、私はボックス席に座っていました。
昼を過ぎていたので、乗る前に買った駅弁を膝の上に置き、掛け紙を外しました。
ようやく食べられると思って箸を取ったところで、向かいに座っていた年配の男性から声をかけられました。
「すみません。食べ物のにおいが少し苦手で…できれば控えてもらえると助かるんですが」
責めるような言い方ではありませんでした。体調なのか、単ににおいに敏感なのかは分かりません。それでも、困っていることだけは伝わってきました。
私は「すみません」と答え、まだほとんど手をつけていなかった弁当の蓋を閉じようとしました。
隣から聞こえた、何気ない一言
そのとき、隣に座っていた小さな子どもが私の弁当を見て言いました。
「いいにおい。電車で食べる駅弁って、おいしそうだね」
誰かをかばうつもりなどなかったのでしょう。ただ目の前の弁当を見て、思ったことをそのまま口にしたようでした。
すぐに親御さんが「じろじろ見ないの。ごめんなさい」と子どもをたしなめました。
私は笑って「大丈夫ですよ」と答えましたが、弁当をどうしようか迷ったままでした。
すると向かいの男性が少し間を置いてから言いました。
「こちらこそ、すみません。食べるなと言いたかったわけではないんです」
私は「では、なるべく早く済ませますね」と返しました。
どちらかだけが我慢する必要もなかった
それから私は、においの強そうなおかずを後回しにしながら、残りを手早く食べました。
男性は窓のほうを向き、その後は何も言いませんでした。
子どもも親御さんに注意されてからは、こちらをのぞき込むことはありませんでした。
しばらくして男性が先に降りるとき、私たちは小さく会釈を交わしました。それだけで終わった出来事です。
電車で駅弁を楽しみたい人もいれば、食べ物のにおいが苦手な人もいます。どちらか一方だけが正しいと決めるのは難しいのだと思います。
あのとき印象に残ったのは、子どもの一言で誰かが言い負かされたことではありません。事情の違う人同士でも、少しずつ譲れば、その場を必要以上に険悪にせずに済むこともあるのだと感じたことでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














