「お一人様1個まで」の無料のガムを3個取った男性。だが、店員が伝えた正論
隣の卓にいた4人家族
休日の昼、私は食べ放題の店で食事をしていた。店内は家族連れでにぎわっていて、隣の卓には男性と連れの女性、小さな子どもが二人座っていた。
男性は料理を取って戻ってくると、卓の端に置かれた調味料をかなり多めにかけていた。
「そんなにかけるの?」
女性が少し驚いたように言うと、男性は笑った。
「これくらいがちょうどいいんだよ」
それ以上、女性も何も言わなかった。
特別大きな声を出していたわけでもなく、そのときは少し豪快な人なのかな、と思った程度だった。
家族が取ったあと、男性の手には3個あった
食事を終えて会計へ向かうと、偶然その一家の後ろに並ぶことになった。
レジの横には、個包装のガムが入った浅いかごが置かれていた。
そばには「お一人様1個まで」と書かれた小さな札が立っている。
会計を待つ間、女性が1個取り、続いて子どもたちもそれぞれ1個ずつ手にした。
最後に男性がかごへ手を伸ばした。
ところが、その手にあったのは3個だった。
店員が気づき、穏やかに声をかけた。
「すみません。おひとつでお願いします」
男性は手の中のガムを見て、少し眉を上げた。
「え、3個くらいいいでしょ。無料なんだし」
「申し訳ありません。お一人様1個でお願いしているんです」
男性はかごの中を見ながら、小さく笑った。
「こんなにあるんだから、別にいいでしょ」
店員は困ったような顔をしながらも、声を荒らげなかった。
「すみません。皆さん同じように、おひとつでお願いします」
それが三度目だった。
横にいた女性が男性の袖を軽く引いた。
「もういいじゃん。戻そう」
男性は少し黙っていたが、やがて「はいはい」と息を吐いた。
そして手を開き、2個をかごへ戻した。
残った1個だけを持つと、先に歩き出した家族を追うように店を出ていった。
店員は何事もなかったように次の会計へ
店員はかごの中で転がった2個を並べ直すと、すぐに私のほうへ向き直った。
「お待たせしました」
先ほどまでのやり取りを引きずった様子はなかった。
男性を言い負かしたわけでも、強い口調で責めたわけでもない。それでも「1人1個」という線だけは最後まで変えなかった。
会計を終えて店を出たあとも、淡々と同じ言葉を繰り返していた店員の姿が妙に心に残っていた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














