「自由席が混んでたんです」私の指定席にいた家族。指摘しても動かなかった家族の言い分とは
ぬいぐるみを抱えた女の子
年末、実家へ帰るために特急の指定席を取った。
発車の少し前に乗りこみ、切符と座席番号を見比べながら通路を進んだ。ところが私の席には、4歳くらいの女の子がちょこんと座っていた。
隣には母親、通路をはさんだ席には父親がいた。
席を間違えているのだろうと思い、私は父親に声をかけた。
「すみません。そこ、私が予約した席なんですけど」
父親は私を見たあと、女の子へ目をやった。
「ああ…でも、子どもがいるんですよ。ここじゃだめですか」
突然そう言われ、私は少し戸惑った。
「切符にもこの番号が書いてあります。私が予約した席なんです」
すると父親は困ったように眉を寄せた。
「自由席がすごく混んでたんです。子どもだけでも座らせてもらえませんか」
事情を聞けば、子どもを立たせたくない気持ちは分かる。それでも、年末の混雑を考えて早くから取っていた席だった。
女の子はぬいぐるみを抱えたまま、大人たちの顔を不思議そうに見上げている。
この子に何の責任もないからこそ、強い口調にもなれなかった。
「申し訳ないんですけど、私が予約した席なので、空けてもらえますか」
これで3度目だった。
父親は小さく息を吐いたものの、立ち上がろうとはしなかった。母親も父親の顔を見たが、何も言わずバッグを抱え直した。
前の車両へ移っていった家族
やがて列車が動き出した。私はキャリーケースの持ち手を握ったまま、席のそばに立っていた。
しばらくすると、車内を回っていた車掌さんがやってきた。
「どうされましたか」
私はほっとしながら切符を見せた。
「ここが私の席なんです。でも、こちらのお子さんが座っていて…」
車掌さんは私の切符と座席番号を確認すると、家族へ向き直った。
「恐れ入ります。皆さまの切符を確認させていただけますか」
「自由席がいっぱいだったんで、子どもだけでもと思って」
車掌さんは落ち着いた声で説明した。
「お気持ちは分かりますが、こちらは指定席の車両です。お持ちの切符ですと、自由席は前の車両になります」
父親はしばらく黙っていたが、やがて女の子を見た。
「…分かった。前に行こう」
母親がバッグを持ち上げ、女の子へ手を差し出した。
「ほら、ぬいぐるみ持って。行こうか」
女の子は小さく「うん」と答え、ぬいぐるみを抱えて立ち上がった。
家族が前の車両へ向かったあと、車掌さんが私に声をかけた。
「お待たせしました。こちらのお席で大丈夫です」
「ありがとうございます。助かりました」
ようやく窓側の席に座ると、思っていた以上に肩へ力が入っていたことに気づいた。
実家に着くと、玄関先で弟が「混んでた?」と聞いてきた。
「混んでたよ。それどころか、私の指定席に家族が座ってて」
「え、それでどうしたの?」
「私の席ですって言ったんだけど動いてくれなくて。最後は車掌さんに切符を確認してもらった」
「それは疲れるな…」
「子どもがいたから、こっちも強く言いづらくてね」
相手にも事情はあったのだと思う。それでも、自分で予約した席について伝えることまで遠慮する必要はなかったのだと、あとになって感じた出来事だった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














