「録音してるからな」料金に納得しない男性客。料金に納得せず10分以上要求を続けた末、店長が返した一言
机に置かれた携帯電話
携帯ショップで働いていたころの、忘れられない午後がある。機種変更に来た60代くらいの男性の担当になり、私は新しい機種の料金を順に説明していた。
「高すぎるだろ。テレビじゃ、もっと安いって言ってたぞ」
「テレビで紹介されていたのは、キャンペーン中の別の機種なんです。こちらとは価格が違うんです」
「そんなの知らないよ。だったらテレビで言ってた値段にしてくれよ」
私はもう一度、機種が違うことを説明した。
しかし男性は納得せず、「テレビと同じ値段にできないのか」と繰り返した。
そのうち「責任者を呼んでくれ」「話の分かる人に代わってよ」という声まで大きくなり、やり取りは10分以上続いた。
待合の椅子に座るお客さんたちも、気まずそうにこちらを見ていた。
私は謝りながら、説明を続けるしかなかった。料金プランの話に移ったところで、男性がカウンターを指でたたいた。
「ちょっと待てよ。お前、さっきと言ってること違うだろ」
「いえ、ご案内している内容は先ほどから変わっていません」
「いや、違う。俺はちゃんと聞いてたからな」
男性は携帯電話を取り出し、画面をこちらに向けて机の真ん中に置いた。
そして、にらむような目で低く言った。
「録音してるからな。あとで『言った、言わない』は通用しないぞ」
突然そう言われ、私は一瞬返事に詰まった。
すると男性は、念を押すようにもう一度言った。
「聞こえたか?録音してるからな」
のどが乾いて、何を言えばいいのか分からなくなりそうだった。
店長が代わって説明すると
そのとき、後ろから店長が歩いてきて、私の横に立った。店長は男性に軽く頭を下げ、テレビで紹介されていた機種の案内を一枚、机の上に置いた。
「お待たせしました。テレビで紹介されていた価格は、こちらの機種のものです。今お選びいただいている機種とは別になります」
「だから、わかりにくいだろ?」
「わかりにくかったかもしれません。ただ、こちらの機種を同じ価格にすることはできないんです」
「店長なんだろ?そこを何とかできないのかよ」
店長は声を荒らげることなく、案内を指さした。
「申し訳ありませんが、価格を変更することはできません。先ほど担当した者も、同じ内容をご案内しています」
男性は机の携帯電話に目を落としたあと、不満そうに店長を見た。
店長も携帯電話にちらりと目をやったが、表情を変えなかった。
「記録していただいていても大丈夫です。こちらからご案内できる内容は変わりません」
男性は何か言いかけたものの、しばらく案内を見つめたまま黙っていた。
やがて「もういい」と小さく言い、携帯電話を上着のポケットにしまうと、手続きをせずに自動ドアの向こうへ帰っていった。
店内に、いつもの呼び出し音が戻った。
緊張が抜けずにいる私に、店長が小さく声をかけた。
「大丈夫?」
「はい…すみません。途中から、何を言っても怒らせそうで」
店長は首を横に振った。
「謝らなくていいよ。説明は間違ってなかったから」
そして少し間を置いて、穏やかに続けた。
「記録されて困るような案内もしてない。ちゃんと対応できてたよ」
その言葉を聞いて、ようやく肩の力が少し抜けた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














