「人の駐車場に勝手に停めたらダメなんでしょ?」注意されても無断駐車を続けたママ友に、息子が聞いた一言
番号の札が立つ区画に、いつもの車
わが家は、ママ友が集まるときの定番の場所になっていた。
近所の人は歩いて来るが、少し遠くに住むママ友だけは車で来る。うちの敷地には、お客さんの車を置く場所がない。
家の真向かいには、契約した人だけが使える月極駐車場がある。
そのママ友は、来るたびに空いている区画へ車を停めていた。
インターホンに出ると、いつも明るい声が返ってくる。
「ごめん、ちょっとだけここに置かせて。すぐ帰るから」
そう言うものの、すぐ帰る日は一度もなかった。
さすがに気になり、私はある日、遠回しに伝えてみた。
「あそこ、月極だよね。ちゃんと借りてる人がいるんじゃないかな」
ママ友は少し驚いた顔をした。
「あ、そうなんだ」
ところが次に来たとき、車は端の区画に移っていただけだった。
そのママ友は、学校の行事では先頭に立って段取りをしてくれる人だった。私自身も何度も助けてもらっていて、ほかのママ友たちも強く言いにくい様子だった。
ある雨の日、契約者の女性が帰ってきた。
自分の区画に別の車が停まっているのを見て、その女性は車の前でクラクションを鳴らした。
私とママ友は慌てて外へ飛び出した。
「すみません、すぐ移します。本当にごめんなさい」
私も隣で頭を下げると、女性は困ったような顔でママ友を見た。
「ここ、私が借りている場所なんです。次からは停めないでもらえますか」
「…はい。すみませんでした」
さすがにこれでもう停めることはないだろう。私はそう思っていた。
息子が口にした、素朴な疑問
ところが次の集まりの日、キッチンの窓から外を見ると、見覚えのある車がまた向かいの駐車場へ入っていった。
ママ友は空いている区画に車を停めると、こちらに気づいて軽く手を上げた。
「今日は空いてるし、ちょっとだけだから」
私は思わずため息をついた。
そばにいた別のママ友へ、小さな声でこぼした。
「この前、あそこまで言われたのに……。もう、なんて言えばいいんだろう」
「言いづらいよね。いつもいろいろやってくれてるし……」
その会話を、近くで宿題をしていた息子も聞いていた。
やがて玄関が開き、ママ友が「お邪魔します」と入ってきた。
息子は鉛筆を置くと玄関へ行き、靴を脱いでいるママ友を見上げた。
「ねえ。人の駐車場に勝手に停めたらダメなんでしょ?」
責めるような口調ではなかった。ただ、本当に分からないことを確かめるような声だった。
玄関がしんと静かになった。
ママ友は脱ぎかけた靴に手をかけたまま、息子の顔を見た。
「…うん。そうだね」
少し間を置いて、気まずそうに笑った。
「ちょっとだけならいいかなって思っちゃった。ごめんね。ダメだよね」
そして、そのまま靴をはき直した。
「ちゃんと別のところに停めてくるよ」
息子は首をかしげた。
「どこに停めるの?」
「坂の下にコインパーキングがあるから、そこ。今から移してくるね」
ママ友が外へ出ていくと、隣にいたママ友が私のほうを見た。
「……子どもって、まっすぐ聞くね」
「ほんとだね」
私は苦笑いしながらうなずいた。
十分ほどして戻ってきたママ友の手には、小さな駐車券が握られていた。
その日から、向かいの月極駐車場にそのママ友の車が入ることはなくなった。
集まりの帰りには坂の下へ歩きながら、見送りに出た息子へ「じゃあね」と手を振っていくようになった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














