「山の温泉って、海も見えるんだっけ?」家族旅行で案内役を任された私。だが、車窓いっぱいの海を見て固まった瞬間
乗りかえを任された家族旅行
去年、両親と弟と4人で、山あいの温泉へ旅行したときのことです。
家族そろって遠出をするのは久しぶりで、電車の時刻や乗りかえを調べる役は、私が自分から引き受けました。
前の晩には、乗る予定の電車を1本ずつ手帳に書き出して準備も万全。
当日の朝も、駅では私が先頭を歩きました。
「こっちだよ。はぐれないでね」
「ずいぶん張り切ってるなあ」
父が笑います。私は手帳を確認しながら家族を連れてホームへ向かいました。
ホームに着くと、向かい側にはすでに電車が停まっていました。
私はそれを自分たちが乗る電車だと思い込み、行き先をきちんと確認しないまま家族を連れて乗り込みました。
4人で向かい合う席に座ると、窓側の母が外を眺め、父は早くも眠そうな顔をしています。
私は手帳と時計を見比べ、自信たっぷりに言いました。
「山の駅まであと30分だよ」
「頼りになるわね」
母にそう言われ、私はすっかり安心していました。
山へ向かうはずなのに、窓の外には海
しばらくすると、母がおせんべいを配り始めました。
父は腕を組んだまま目を閉じ、私は向かいに座る弟と、旅館の夕食に出るという川魚の塩焼きの話をしていました。
「その話、もう3回聞いたよ」
「じゃあ、これで最後にする」
そう笑っていると、それまで窓の外を見ていた母が、ふと首をかしげました。
「ねえ…この景色で合ってる?」
「え?もうすぐ山のほうに入るはずだけど」
私は何気なく窓の外を見ました。
その瞬間、言葉が止まりました。
山へ向かっているはずなのに、車窓いっぱいに広がっていたのは青い海。
波が日の光を受けて、きらきらと輝いています。
「…海?」
慌てて車内の案内を確認して、ようやく気づきました。
私たちが乗ったのは、目的地とは反対方向へ向かう電車だったのです。
ホームに着いたとき、向かい側に停まっていた電車を自分たちが乗るものだと思い込み、行き先を確認せず乗ってしまっていました。
弟が窓の外を指さしながら笑いました。
「山の温泉って、海も見えるんだっけ?」
「……ごめん。完全に間違えた」
父も目を開けて海を確認すると、苦笑いするだけでした。
次の駅で降り、反対方向の電車に乗り直すことに。
待っているあいだ、母は笑いながら私の肩を軽くたたきました。
「次は、乗る前に行き先までちゃんと見ようね」
「はい……」
結局、旅館には予定より1時間遅れて到着しました。
夕食の席で、母は川魚の塩焼きをほぐしながら言いました。
「まあ、海も見られたんだから、得したと思おうか」
家族が笑うなか、私はもう一度「ごめん」と頭を下げました。
それ以来、電車に乗るときは、時刻だけでなく行き先の表示まで必ず確認するようになりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














