「お皿は灰皿ではありません」料理をけなし値引きを求めた客。だが、店主が伝えた正論
店じゅうに響いた大きな笑い声
今から20年ほど前、友人とお昼を食べに、町の小さな定食屋へ入りました。
店内でたばこを吸うことが、まだ珍しくなかったころです。
私たちは窓ぎわのテーブルに座り、2人とも唐揚げ定食を頼みました。
隣のテーブルでは、60代くらいの男女4人が先に食事をしていました。
店の奥さんがお茶を注ぎに来ても、4人はほとんど顔を上げません。
なかでも一人の男性は、店の人に何か頼むたび、ぶっきらぼうな口調でした。
しばらくすると、その男性が店内に響くほどの声で言いました。
「いやあ、あんまりうまくなかったな」
すると、ほかの3人がどっと笑います。友人は箸を止め、小声で私に言いました。
「これ、わざと聞こえるように言ってない?」
「うん…厨房まで聞こえてそう」
その後、男性はたばこを吸い終えると、唐揚げがのっていた平皿に吸い殻を押しつけました。
ほかの3人も続き、同じ皿へ吸い殻を入れていきます。
さらに男性は声を張りました。
「唐揚げもご飯もまずい店だな。灰皿もないのか」
店の奥さんが急いで灰皿を持ってきましたが、そのころには皿の上に何本もの吸い殻がありました。
男性は灰皿を受け取らず、テーブルの端へ押しやりました。
伝票を見た男性が黙り込んだ
食事を終えた4人は、入口のレジへ向かいました。厨房から出てきた店主がレジに立つと、男性は台越しに言いました。
「正直、まずかったしさ。半分くらい残したんだ。少しくらい引いてくれるよな?」
私と友人は思わず顔を見合わせました。
店主は言い返すことなく、手元の伝票を確認してから、男性の前へ差し出しました。
「お客様、唐揚げは2回、追加でご注文されています。ご飯も4杯、おかわりされていますよ」
男性の表情が止まりました。
店主は続けます。
「お下げしたお皿も、料理が半分残っていたものはありませんでした。あったのは、吸い殻の入ったお皿だけです」
少し間を置いて、店主は静かに言いました。
「お皿は灰皿ではありませんので。お代は伝票どおり、お願いします」
男性は伝票を見たまま何も言い返しませんでした。店内のあちこちから小さな笑い声が漏れると、うしろの3人も気まずそうに目をそらします。
結局、男性は黙って財布を開き、伝票どおりの金額を支払いました。4人はそのまま早足で店を出ていきます。
店主が何事もなかったように厨房へ戻ると、友人がぽつりと言いました。
「……ご飯、4杯もおかわりしてたんだね」
私は思わずうなずき、残っていた唐揚げをひとつ口に運びました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














