「合鍵を、私に預けなさい」留守の新居でお茶を飲み、今日が初めてと言って嫁の私に迫る義母。その嘘の末路
早めに帰った夕方の居間
早めに帰ると、居間のソファで義母がお茶を飲んでいました
居間の入口で、肩にかけた鞄の持ち手を握ったまま、足が止まりました。ソファに義母が座り、湯のみのお茶を飲んでいたのです。
平日の夕方、仕事を早めに切り上げて帰った日でした。夫と私が、この家に越してきて3週間。合鍵は、まだ誰にも渡していません。
どうやって入ったのかと尋ねると、義母は湯のみを両手で持ったまま言いました。
「不用心な家ねえ。」
「玄関が、開いてたのよ。」
義母は、この家に来たのは今日が初めてだと言いました
今朝、玄関の鍵を閉めた覚えはあります。けれど、閉めたと言える証拠はありません。
「この家に来たのは、今日が初めて。」
義母はそう言って、湯のみを座卓に置きました。
居間の右奥には、柴犬のこむぎが過ごすサークルがあります。こむぎはその中で丸くなり、目を閉じて眠っていました。
引っ越しの日に迎えた子で、警戒心が強く、3週間たった今も夫にさえ近寄りません。散歩も、私としか行けない子です。知らない人が来ると、サークルの隅で震えてしまいます。
合鍵を預けろと迫られ、私は言い返せずに下を向きました
「戸締まりひとつ、できないのね。」
「合鍵を、私に預けなさい。」
言い返したくても、声が出ませんでした。電話を一度断っただけで、『嫁が冷たい』と夫に1週間泣きついた義母です。
私は鞄の持ち手を握りしめて、下を向くしかありませんでした。
戸締まりひとつできないと言われて
柵から出さないでと言う義母に、座っていてと頼みました
「犬は苦手なの。柵から出さないで。」
義母はサークルの方を見もしないまま、そう言いました。
帰ったらすぐサークルから出して、散歩に行く。それが、こむぎと私の毎日の決まりです。
その日は散歩の時間を迎えていましたが、義母がいるので迷いました。ただ、義母はこむぎの様子を一度も確かめず、いつもここにいることを知っているような口ぶりでした。
私は肩の鞄を下ろして、義母に言いました。
「そのまま、座っていてください。」
人見知りのこむぎが、まっすぐ義母の膝にあごをのせました
私は義母の様子を見ながらサークルの扉を開けると、座卓の横まで戻って、いつものように名前を呼びました。
こむぎは私には見向きもせず、サークルを出てまっすぐソファの前へ行きました。お座りをして、義母の膝にあごをのせ、しっぽを振っています。
義母も驚く様子はなく、こむぎを見下ろしていました。犬が苦手だと言っていたのに、その様子はずいぶん落ち着いています。
初対面の人には近寄ろうともしないこむぎが、どうしてこんなに懐いているのでしょうか。私は、義母が以前にもこの家を訪れていたのではないかと疑い始めました。
「優しい人には、犬も寄ってくるわ!」
「夫にさえ、まだ寄りつきません。」
義母は得意そうに笑っていましたが、私は今朝の玄関のことを思い返していました。
犬が懐いたというだけでは、以前から会っていた証拠にはなりません。それでも、戸締まりをしたはずの家に義母がいたことと合わせると、どうしても気になりました。
義母は、銀色の合鍵を出して座卓に置きました
私は、義母に今日まで何度この家に来たのかと尋ねました。義母は最初、何も答えませんでした。
さらに、玄関には鍵をかけた覚えがあることを伝え、合鍵を持っているのではないかと確認しました。
義母の表情が変わりました。しばらく黙ったあと、義母は鞄の中を探り始めました。
私が手のひらで座卓の上を示すと、義母は銀色の鍵を出して、そこに置きました。
「引っ越しの前に、合鍵を作ったわ。」
義母は観念したように、少しずつ事情を話し始めました。
引っ越し前、実家に寄った夫の鍵をこっそり借りて合鍵を作ったこと。私たちが越してきてから、平日の昼間に何度も無断で上がり込み、こむぎにおやつを与えていたこと。今日もその鍵で入ったのに、知られたくなくて私の戸締まりのせいにしたこと。
すべてを聞き終えたとき、私は背筋が冷たくなりました。こむぎが義母に懐いていた理由も、ようやく分かった気がしました。
私は返された鍵を預かり、帰宅した夫に事情を説明して、玄関の鍵を交換することにしました。ほかにも合鍵が作られているかもしれないからです。
義母がまた夫に泣きついても、今度は無断で合鍵を作り、家に入っていた事実をきちんと伝えるつもりです。
「戸締まりは、もうご心配なく。」
膝にあごをのせたままのこむぎを、義母は最後までどけられませんでした。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














