「仕事だからって、何してもいいと思ってんのか!」繁華街で私を怒鳴った男性。だが、女性の一言で静かになった瞬間
チラシを配っていた私に詰め寄る男性
あれは15年ほど前のことです。当時の私は、繁華街の歩道でチラシを配るアルバイトをしていました。
人通りの多い場所でしたが、ただ立っているだけでは、なかなかチラシを受け取ってもらえません。
そのため、私はできるだけ大きな声を出して、通りかかる人たちに呼びかけていました。
「お願いしまーす!新しいご案内でーす!」
その日も昼間の人混みに向かって声を張っていると、向こうから男性が歩いてきました。
男性は険しい表情をしていて、その少し後ろには連れらしい女性が歩いていました。
男性は私の目の前まで来ると、突然足を止めました。
チラシを受け取る様子もなく、腕を組んでじろじろとこちらを見ています。
「ったく、どいつもこいつも……」
何かつぶやいたかと思うと、男性はいきなり顔を近づけてきました。
「おい、てめぇ!うるせぇんだよ!」
「えっ…?」
あまりに突然のことで、私は思わず固まってしまいました。
「仕事だからって、何してもいいと思ってんのか!」
確かに大きな声で呼び込みをしていましたが、まさか目の前で怒鳴られるとは思っていませんでした。
「あの、すみません……」
どう答えればいいのか分からず、チラシの束を抱えたまま立ち尽くしていました。
男性はさらに身を乗り出してきます。周囲では何人かが足を止めていましたが、誰も声をかけてきません。
このままどうなってしまうのか。私は男性から目を離せませんでした。
連れの女性が男性の腕をつかんだ瞬間
そのときです。
少し後ろを歩いていた女性が近づいてきて、男性と私の間に入りました。
そして男性の腕をつかむと、ぐっと引き戻したのです。
「ちょっと、何やってんの!」
男性が女性のほうを振り向くと、女性ははっきりした声で言いました。
「あんた、嫌がってるじゃないの」
「なんだよ、お前には関係ないだろ」
「関係ないわけないでしょ。やめなさいよ。この人は仕事してるだけでしょ!」
女性は男性の腕を離さず、まっすぐ顔を見ていました。
男性は何か言い返そうとしたようでしたが、すぐには言葉が出てきません。
周囲から小さな笑い声が聞こえ、男性は気まずそうに視線をそらしました。
それまで私に向かって怒鳴っていた男性が急に静かになり、私は驚くばかりでした。
すると女性は私のほうに向き直り、申し訳なさそうに頭を下げました。
「ごめんなさいね。びっくりしたでしょう」
「いえ……助かりました。ありがとうございます」
私がそう答えると、男性は何も言わずに歩き出しました。
女性を待つこともなく、足早に人混みの中へ入っていきます。
女性はそんな男性を見送ると、私の手元に残っていたチラシを一枚受け取りました。
「がんばってね」
そう言って笑顔を見せると、小走りで男性のあとを追っていきました。
私はしばらくその後ろ姿を見送っていました。
さっきまで怖くて声も出なかったのに、女性の一言でようやく落ち着くことができたのです。
大きく息を吐き、抱えていたチラシの束を持ち直しました。
そして、再び通りに向かって呼びかけました。
「ご案内でーす!どうぞー!」
あの女性が最後に見せてくれた笑顔は、15年ほどたった今でも覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














