「最後は私が押し込みました」半年間一人で組んだ案件を契約日に横取りした上司→取引先から届いたメールが唯一の救いだった
受注当日の助手席で感じた違和感
地方で数店舗を構える歯科医院の業務支援、規模は小さい案件だった。
けれど私にとっては、半年かけて一人で組み上げた仕事でした。
原案を引き受けた時点では、社内の誰も期待していなかった案件です。
動線の調査も、運用フローの整理も、システム設計の骨組みも、私が一人で先方に通って詰めてきた。
受注の電話が入ったその日、契約書を抱えて先方に向かう車中、助手席には直属の課長が座っていた。
前日まで一度も同席を申し出てこなかった人です。
「全部一人で組み上げました」
院長室で資料を広げながら、私は静かにそう告げた。
原案、調査、設計、見積りの根拠、すべての工程を一人でやってきたという事実だけは、せめて先方に届けておきたかったのです。
けれど課長は、私の言葉に被せるように説明を引き取り、進行を握っていった。
気づけば私は、図面を指差すだけの役回りになっていました。
院長が私に向かって「現場をよく見てくださっていますね」と言いかけた瞬間にも、課長は笑顔で別の話題に流していく。手慣れたものでした。
社内に届いた話と、届かなかった半年
翌週、社内会議でその案件の受注報告がありました。
話の主役は、最初から最後まで課長です。
「現場が思ったより固くてね、最後は私が押し込みました」
そう言って笑う声を、私は後ろの席で聞いていた。
半年間、夜のオフィスでホワイトボードに線を引き続けた時間は、その報告のどこにも入っていません。
50代も半ばになると、こうした場面は何度も見てきました。
組織の中では、結果を運んだ人より、結果の瞬間に立ち会った人のほうが残ります。それが分かっているからこそ、抗議の言葉は喉の奥で止まるのです。
会議の後、若手の同僚が「あの案件、課長すごいですね」と私に話しかけてきました。
私は曖昧に頷き返すしかなかった。半年の積み重ねを、ここで一から説明する場でもないのです。
院長から後日、個別に短いお礼のメールが届いた。そこには課長の名前は出てこなかった。
それだけが救いだった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














