「今年借りたのは、醤油1本だけ」借りては返さず、お隣の前で私をケチと笑う近所の奥さん。態度が一変
夕方の門の前で
近所の奥さんは、お礼のお酒を掲げて、また醤油を借りに来ました
夕飯の支度の途中で門へ出ると、近所の奥さんが茶色の瓶を1本、胸の前に掲げていました。お礼にこれを置いていく、というのです。
「醤油、また1本貸してちょうだい。」
「今日は、夕飯の分しか……。」
同じ通りに住む50代の奥さんは、この春に私たちが越してきてから、醤油が切れるたびに借りに来ます。毎回1本ずつ持っていきますが、借りた醤油が返ってきたことはありません。
その代わり、家で余っているというお酒を1本ずつ置いていくのです。お酒を飲まない私にとっては、醤油を返してもらう方がずっと助かります。しかし、最初の日に「あなたの家、お酒もないの?」と笑われて以来、なかなか強く断れずにいました。
夕飯の分しかないと断ると、近所の奥さんは言い訳だと言いました
奥さんは瓶を手さげにしまうと、大きなため息をつきました。
「夕飯の分なんて、言い訳ね。」
「お隣さんに借りるわ。」
以前、受け取ったお酒を返そうとしたことがありました。醤油を返してもらえれば十分だと伝えたかったのですが、奥さんは露骨に不機嫌になりました。
その翌週、町内の掃除の日には、奥さんを囲んで話していた近所の人たちの輪に、私だけ入れてもらえませんでした。奥さんが何を話したのかは分かりませんが、あの日の居心地の悪さを思い出すと、今も言い返すのが怖いのです。
近所の奥さんはお隣の奥さんに、今年借りたのは1本だけと言いました
奥さんがお隣のチャイムを鳴らすと、お隣の奥さんが門扉の内側まで出てきました。醤油を借りに来た奥さんは、2つの門の間に立ち、私にも聞こえる、笑いまじりの声で話し始めます。
「1回貸しただけで、もうケチるのよ。」
「今年借りたのは、醤油1本だけ。」
醤油を借りているのは向こうなのに、まるで自分が何かを貸した側であるかのような言い方です。
しかも、借りた醤油は1本どころではありません。何度も持っていかれた光景が頭に浮かびますが、すぐには声が出ません。門扉の格子を握る手に、思わず力が入りました。
お隣の奥さんが見ている前で
近所の奥さんは、借りた時だけお礼に1本ずつ置いていると言いました
「借りた時だけ、お礼に1本ずつ。」
「ただで物は、あげないわ。」
奥さんは、自分がお酒を渡していることを得意げに話しました。醤油を返していないことには、まったく触れません。
その向こうで、お隣の奥さんが首をかしげ、私の方を見ました。本当なのかと尋ねるような表情です。
噂は今でも怖い。でも黙っていても、私だけがケチな人にされてしまいます。
それに、借りるたびにお礼を1本ずつ置いていると、奥さん自身が認めたばかりです。私は門の横にある物置に目を向けました。
物置の棚には、封を切っていないお礼のお酒が6本並んでいました
私は門の横にある物置の扉を、大きく開けました。物置の中の棚には、茶色の瓶が6本、一列に並んでいます。奥さんがさっき手さげにしまったのと、同じ瓶です。
どれも封を切っていません。お酒を飲まない私には必要のないもので、いつかまとめて返そうと思い、置いていかれるたびにここへしまっていたのです。
春から今日までに受け取った瓶は、全部で6本。奥さんが自分で説明した通り、醤油を借りた日に1本ずつ置いていったものです。
「1本ずつなら、6回借りています。」
奥さんの表情がこわばりました。お隣の奥さんも、棚に並んだ瓶を見つめています。
私は、受け取ったお酒はすべて返すつもりだと伝えました。お礼のお酒が欲しかったわけではありません。最初から、貸した醤油を返してほしかっただけなのです。
「醤油を6本、返してください。」
近所の奥さんの目の前で、お隣の奥さんが門扉の掛け金をかけました
物置の隅にあった空き箱に6本を詰めて、門ごしに差し出しました。奥さんはすぐには受け取ろうとせず、お隣の奥さんの顔をちらりと見ました。
「それは、お中元のお裾分けだわ!」
「夏も、借りた日に置いていきました。」
お酒を受け取ったのは夏だけではありません。春から何度も、醤油を貸した日に同じ瓶を置いていったのです。
お隣の奥さんも、その説明を聞いて黙っていました。さっきまで私をケチだと笑っていた奥さんは、もう同じ言葉を繰り返しません。
しばらくして、奥さんは渋々、差し出した箱を受け取りました。
醤油は、あした6本持ってくるわよ。奥さんは、お隣に聞こえないほどの小さな声でそう言いました。
すると、お隣の奥さんは、うちも醤油は切らしてるの、と告げて門扉の掛け金を下ろしました。これ以上、貸し借りの話には関わりたくない様子でした。
近所の奥さんは何も言い返さず、箱を抱え直しました。腕の中で、6本の瓶がかちりと鳴りました。
私はその背中を見送りながら、ようやく胸のつかえが少し取れた気がしました。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














