tend Editorial Team

2025.11.28(Fri)

エレベーターで「閉」ボタンを連打するせっかちな男。扉に挟まりかけた上司との絶望的な空気【短編小説】

エレベーターで「閉」ボタンを連打するせっかちな男。扉に挟まりかけた上司との絶望的な空気【短編小説】

本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

響き渡る「閉」ボタンの連打

朝の通勤ラッシュ、オフィスビルのエレベーターというのは、ただでさえ殺伐とした空気が流れる場所ですよね。

私が勤める会社はビルの高層階にあるのですが、そこで起きた、ある背筋の凍るような出来事をお話しします。

その日、私はたまたま同じ部署の男性社員と二人きりでエレベーターに乗り合わせました。

彼は仕事は早いのですが、とにかくせっかちで有名。

「時は金なり」を履き違えているようなタイプで、常に貧乏ゆすりをしているような人でした。

私たちが乗り込むやいなや、彼は親指の腹が白くなるほどの勢いで「閉」ボタンを連打し始めました。

「カカカカッ!」

静かな箱の中に、乾いた音が響き渡ります。「チッ、おっせぇな」と小さな舌打ちまで聞こえてきて、私は居心地の悪さを感じていました。

扉が閉まりかけた、その瞬間です。

ホールの向こうから、誰かが急いでこちらへ向かってくる気配がしました。

「すみません、乗ります!」

そう声が聞こえたはずなのに、彼はその声を無視するように、さらに激しく「閉」ボタンを押し込んだのです。

「無理やり入ってくんじゃねーよ……」

彼がそう吐き捨てた瞬間、閉まりかけた扉が、駆け込んできた男性の肩に「ドンッ!」と鈍い音を立ててぶつかりました。センサーが反応し、扉が再び開きます。

「あーあ、最悪」

彼は悪びれもせず、睨みつけるように入ってきた人物を見上げました。

顔面蒼白の沈黙

しかし、次の瞬間、彼の顔からスッと血の気が引いていくのが分かりました。

そこに立っていたのは、私たちの会社の役員の中で最も恐れられている上司だったのです。

眉間に深い皺を寄せ、扉に挟まれた右肩をさすりながら、上司は静かに彼を見下ろしました。

「……随分と、急いでいるようだな」

低く、重みのある声でした。怒鳴られたほうがマシだったかもしれません。

彼の手は震え、さっきまで威勢よく連打していた指は行き場を失って空を彷徨っています。

「あ、いえ、その……」と言い訳をしようとしますが、声が出ていません。

目的の階に着くまでの数十秒間、エレベーター内は静寂に包まれました。私はただただ気配を消し、到着を願うばかり。

チン、と到着音が鳴り響いた時の開放感と言ったらありません。

その後、彼がどうなったかは詳しく知りませんが、次の人事異動で彼の姿を見かけなくなったことだけは確かです。

たった数秒を惜しんだ代償は、あまりにも大きかったようですね。

 

******************
心に響くストーリーをもっと読みたい方
【他のおすすめ短編小説を見る】
******************

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。
※本コンテンツのテキストの一部は、生成AIを利用して制作しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2025.11.28(Fri)

ジムで「マシンの使い方が違う」と教えたがりの男。私のある経歴を伝えると思わず沈黙、実は。【短編小説】
tend Editorial Team

NEW 2025.11.28(Fri)

「俺の稼ぎで買った家だ」と威張るモラハラ夫。妻からある事実を告げられ、居場所を失ったワケ【短編小説】
tend Editorial Team

NEW 2025.11.28(Fri)

義母「孫の顔も見せない親不孝者」と罵倒。夫が義母からの暴言LINEを親戚中に公開した結果【短編小説】
tend Editorial Team

RECOMMEND

2025.10.29(Wed)

鈴木亮平が日曜劇場『リブート』で主演決定!戸田恵梨香と共演も!ネットでは「日曜21時が待ちきれなくなりそうです」と期待の...
tend Editorial Team

2025.10.09(Thu)

フジ佐々木恭子アナ、高市早苗新総裁の就任あいさつに苦言。ネットでは「アナウンサーなら理解力つけた方がいいですよ」と厳しい...
tend Editorial Team

2025.10.26(Sun)

マツコが抱くレジでの謎「どういうお考え?」にSNSでは「本日のマツコさん、有吉さんのトークは激しく同意するもの多かった〜...
tend Editorial Team