「今ならポイントもらえるんだよね?」携帯の乗り換えをしにきた男。手続きが進まずキレるも、思わぬ原因が発覚し表情が歪む
携帯ショップの出来事
携帯ショップの店員として働いていた頃の話です。
華やかなカウンターの裏側で、私たちは日々、複雑な契約業務や時には理不尽なクレーム対応に追われていました。
ある日の午後、一台のベビーカーを押した男性が来店されました。
「他社から乗り換えたいんだけど。今ならポイントもらえるんだよね?」
開口一番、男性は少し前のめりに切り出しました。
どうやら今回の目的は、乗り換え特典のポイント。
隣には、父親の顔をじっと見上げる小さなお子さんの姿があります。
「はい、キャンペーン期間中ですので対象になります。さっそくお手続きを進めますね」
私は笑顔で応対し、慣れた手つきでタブレットを操作し始めました。
ところが、作業はすぐに暗礁に乗り上げます。
なぜか、今の電話番号をそのまま引き継ぐ設定で、どうしてもエラーが出てしまうのです。
「……おかしいな」
何度試しても、画面には無機質なエラーメッセージが表示されるばかり。
「あの、お客様。申し訳ございません。こちらの番号ですが、現在お手続きが進められない状況でして…」
私の言葉が終わるか終わらないかのうちに、男性の顔がさっと険しくなりました。
「はあ?なんでだよ! ポイント欲しさにわざわざここまで来たんだぞ」
「申し訳ございません。原因を至急お調べしますので…」
「お前のやり方が悪いんじゃないのか?仕事だろ、プロなんだろ!」
静かな店内に、男性の怒鳴り声が響き渡ります。
確認した結果
私は平謝りしながら、裏で関係各所へ必死に電話をかけ続けました。
「そんなはずはない」と詰め寄る男性。
その横で、お子さんはおろおろと父親の裾を掴んでいます。背中に流れる嫌な汗。
原因がわからないまま怒鳴られ続ける時間は、永遠のようにも感じられました。
しかし、ようやく繋がった担当部署からの回答は、あまりにも意外なものでした。
「……お客様。大変申し上げにくいのですが、原因が判明しました」
私は努めて冷静に、しかしはっきりと告げました。
「実は、ご家族のどなたかが、既にその番号を使って別の窓口で移行手続きを完了させているようです。そのため、こちらでは二重に手続きをすることができません」
「……えっ?」
男性は一瞬、時間が止まったかのような顔をしました。
どうやら、奥様か他のご家族が、良かれと思って先に手続きを済ませていた様子。
つまり、私への怒鳴り散らしは完全な「お門違い」であり、確認不足による自業自得だったのです。
「なんだよ……だったら、もっと早く言えよな……」
バツが悪そうに、それでも絞り出すように文句を言う男性。
ですが、その声には先ほどまでの勢いは微塵もありません。結局、何の成果も得られないまま、男性は逃げるように席を立ちました。
その時です。
出口へ向かう背中に、お子さんの無邪気な声が突き刺さりました。
「ねえパパ。パパってアホやね」
そのストレートすぎる一言に、男性の肩がビクッと跳ね、そのままがっくりと項垂れました。
散々理不尽に怒鳴られた私のイライラが、その瞬間にふっと軽くなったのは言うまでもありません。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














