「枕の下にお金が入ってるだろ、ふつう」友人3人が固まった、私だけが知らなかった祖父の習慣
友人三人の反応に、言葉が止まった
二十代半ばのころ、友人三人と居酒屋で、実家や親戚への帰省の話をしていた。
正月に何日泊まるとか、親がいつまでも子ども扱いしてくるとか、そんな何気ない話だった。
そこで私は、ごく普通のことのように口をはさんだ。
「祖父母の家に泊まると、枕の下にお金が入ってるだろ、ふつう」
一瞬、三人の動きが止まった。向かいに座っていた友人が、持ち上げかけたジョッキをテーブルに戻す。
「…何が入ってるって?」
「お金。お札が何枚か」
そう答えると、三人がそろって驚いた顔をした。
「そんなわけないだろ。うちは枕しかないぞ」
「え、毎回なの?」
「一回でいいから、その枕で寝てみたいわ」
笑う友人もいれば、本気で驚いている友人もいた。
けれど、いちばん驚いていたのは私だった。
私はそれまで、祖父母の家に泊まれば枕の下にお金が入っているのは、どこの家でも同じだと思っていたからだ。
祖父が枕の下に隠していたもの
父は三人兄弟の真ん中で、きょうだいの中で一人だけ東京に出た。
子どものころ、盆や正月になると、私は父と二人で田舎の祖父母の家へ帰っていた。
泊まるのはいつも同じ部屋だった。
そして毎回、朝になると枕の下からお札が何枚か出てきた。
一度だけ、祖父が布団を整えながら、そっと枕の下へ手を入れているところを見たことがある。
目が合うと、祖父は少し困ったような顔をした。
「内緒だぞ。言わんでくれよ」
それだけ言うと、祖父は部屋を出ていった。
なぜ私にだけそうしていたのか、理由を聞いたことはない。
私は朝になると枕の下へ手を入れ、見つけたお札を父には見せず、帰りの電車で財布に移していた。
父も、そのことには一度も触れなかった。
祖父母は、もうずいぶん前に亡くなった。
田舎の家へ行くのも、今では冠婚葬祭のときくらいだ。
それでもあの部屋に泊まると、寝る前につい枕の下へ手を入れてしまう。
何もないと分かっているのに、昔の癖が残っている。
友人たちに驚かれて、初めて知ったわが家だけの習慣。祖父が枕の下に忍ばせていたのは、お札だけではなく、離れて暮らす息子と孫への気持ちだったのかもしれない。
今も、あの枕を見るたびに祖父の困ったような顔を思い出す。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














