「別人みたいだね」祖母の通夜。祖父と私が祖母だと思って見ていた人を、最後まで疑わなかった理由
「別人みたいだね」と話していた
祖母の通夜の日、湯灌が終わったあと、祖父と私は顔を確認するために呼ばれました。
案内された部屋へ入り、横たわっている人の顔を見たとき、私は少し違和感を覚えました。
「なんだか……別人みたいだね」
そう言うと、祖父もじっと顔を見ました。
「そうだなあ。ずいぶん違って見えるな」
それでも、二人とも目の前の人が祖母ではないとは思いませんでした。湯灌をして身支度を整えたことで、いつもと雰囲気が違って見えるのだろう。そんなふうに受け止めていたのです。
祖父と私はそのまま、祖母のことを話していました。
顔が少し違って見えることには気づいていたのに、「別人かもしれない」という考えは、なぜか一度も浮かびませんでした。
部屋を出るとき、名字が目に入った
しばらくして部屋を出ようとしたとき、入口に下がっていた垂れ幕が目に入りました。
そこに書かれていたのは、知らない名字でした。
私は思わず足を止めました。
「……ここ、うちじゃないみたい」
祖父も振り返り、垂れ幕をじっと見上げました。
そのとき、担当の方が戻ってきました。名字を確認すると、すぐに頭を下げました。
「大変申し訳ありません。別のお宅にご案内しておりました」
一度、もう一度、そして三度目。声を抑えながら、深く頭を下げていました。
私は何が起きたのか、すぐには理解できませんでした。
さっきまで祖母だと思って見ていた人は、まったく別の方だったのです。
「いえ……私たちも気づかなくて」
ようやく出てきたのは、それだけでした。
祖父も驚いた様子で、少ししてから頭をかきました。
「気づかんかったなあ」
「うん……全然」
二人とも「別人みたいだ」とまで言っていたのに、最後まで疑わなかったことが、自分でも不思議でした。
それからは、まず名字を見るようになった
そのあと、私たちは正しい部屋へ案内されました。
あらためて祖母の顔を見ると、今度はすぐに分かりました。
担当の方はその後も気にかけてくれて、通夜のあいだ、何度かそっと様子を見に来てくれました。祖父はそのたびに「もう大丈夫ですよ」と言うように、小さく手を振っていました。
帰り道、祖父がぽつりと言いました。
「よく分からんもんだな」
「ほんとにね」
笑うような出来事ではなかったのかもしれません。それでも、あれほど真剣に顔を見ながら、二人ともまったく疑わなかったことを思い出すと、なんとも言えない気持ちになりました。
それ以来、法事などで建物に入ると、私はまず入口の名字を見るようになりました。
祖父も同じようです。この前の法事でも、入口で少し立ち止まり、名字を確かめていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














