「あとで清掃の人が来るんじゃないですか」花壇にゴミを置いた父親。だが、先生がぶつけた正論とは
芝生に座った、二十人の園児
広場の芝生には、青いシートを三枚つなげて、二十人ほどの園児が座っていました。
引率の先生が二人、付き添いの保護者も何人か来ていました。
その日は園の行事で、みんなで外でお弁当を食べることになっていたのです。
「食べ終わったら、ゴミを自分の袋に入れましょうね」
先生が声をかけると、子どもたちは包み紙や空になった袋をそれぞれのリュックへしまっていきました。
事前にもらったしおりにも、「ゴミは各自で持ち帰ること」と書かれていました。
私も娘の水筒をしまっていると、後ろから枝が揺れる音がしました。
振り返ると、シートの端にいた一人の父親が、まとめた弁当の袋と空き缶を花壇の植え込みへ置いていました。
最初は、一時的に置いただけなのかと思いました。しかし父親はそのまま自分の荷物をまとめ始めます。
私は迷いましたが、子どもたちの目の前だったこともあり、声をかけました。
「そこ、花壇ですよ。持ち帰りと書いてあります」
父親は少し面倒そうな顔をして、植え込みを見ました。
「あとで清掃の人が来るんじゃないですか」
「でも、今日は各自で持ち帰ることになっていますよ」
私がそう返すと、近くにいた何人かの園児も、花壇のほうを見ていました。
花壇に残ったゴミを拾うと
父親はすぐには動かなかったため、私は花壇の縁から手を伸ばし、空き缶三本と弁当がらの袋を拾いました。
すると、隣にいた娘が足元に落ちていた箸の袋を見つけました。
「これもゴミかな」
「ありがとう。でも花壇の中は危ないから入らなくていいよ」
私たちの様子に気づいた若い先生も、すぐに近くへ来ました。
「どうされましたか?」
私が事情を説明すると、先生は花壇にほかのゴミが残っていないか確認し、主任の先生へ声をかけました。
主任の先生は状況を聞くと、その父親のところへ向かいました。
「お父さん、こちらのゴミはお持ち帰りください。しおりにも書いてありますので」
責めるような言い方ではありませんでしたが、周囲が静かだったため、その声はよく聞こえました。
父親は花壇と、こちらが持っている袋を見てから、小さく頭を下げました。
「……すみません。持って帰ります」
私は拾った袋を渡しました。
少し前までにぎやかだった広場が、そのときだけ妙に静かになったのを覚えています。
先生が「そろそろ二列に並びますよ」と声をかけると、子どもたちはそれぞれ自分の荷物を持って集まり始めました。
父親も弁当がらの入った袋を手にして、子どものそばへ戻っていきました。
大人同士のやり取りを、子どもは思っている以上によく見ています。だからこそ、あの場で何も言わずに済ませなくてよかったのだと思っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














