「同じバス停の男の人に見られてる気がするんだよね」毎朝バス停でこちらを見る男性。1本遅らせた朝、後ろから聞こえた言葉
毎朝、同じ男性から向けられる視線
働いていたころ、私は毎朝バスで職場へ通っていた。
家の近くにある小さなバス停には、だいたいいつも同じ顔ぶれが並んでいた。
その中に、毎朝私より先に来ている男性がいた。
最初は特に気にしていなかった。
けれど、私が列に加わると男性がこちらへ顔を向け、バスが来るまで何度も視線を送ってくることに気づいた。
たまたまかもしれない。そう思おうとしても、毎朝のこととなると気になってしまう。少しずつ、バス停へ向かう時間そのものが憂うつになっていった。
ある晩、夕食の片づけをしながら夫に話した。
「毎朝、同じバス停の男の人に見られてる気がするんだよね」
「何か言われたりした?」
「ううん。何も言われない。ただ、ずっとこっちを見てくるの」
夫は少し考えてから言った。
「一度、時間をずらしてみたら?顔を合わせなくなるだけでも、少し楽になるかもしれないし」
何かされたわけではないため、大ごとにするのもためらわれた。そこで私は翌週から家を出る時間を遅らせ、1本あとのバスに乗ることにした。
1本遅らせた朝、背後から聞こえた声
時間を変えた最初の朝だった。
バス停の近くまで来たところで、思わず足が止まった。
家と家のあいだに延びる細い道の入口付近に、あの男性が立っていたからだ。
いつも乗っているバスは、もう出たあとの時間だった。
私は気づかないふりをして、そのままバス停へ向かい、列の最後に並んだ。
やがて後ろから足音が近づいてきた。すぐ背後で、その音が止まる。
「1本遅らせたんですね」
低く落ち着いた声だった。
私は驚いて振り返ることもできず、そのまま前を向いていた。何と返せばいいのか分からず、声も出なかった。
男性もそれ以上は何も言わなかった。ただ、バスが来るまで私の後ろに立っていた。
その晩、帰宅した夫に朝のことを話した。
「今日ね、後ろから『1本遅らせたんですね』って言われた」
夫の表情が変わった。
「時間を変えたの、今日が初めてだよな?」
「うん。あなた以外には話してない」
夫はしばらく黙ったあと、「明日から別のバス停を使ったほうがいい」と言った。
次の日から、私はひとつ先のバス停まで歩いて乗るようになった。
いつものバス停の近くを通るときは、あの細い道のほうを見ないようにして、足早に通り過ぎた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














