「お年玉が復活した年を覚えてる?」父方の親戚から突然もらえなくなったお年玉。だが、大人になった私が母から聞いた真相
伯父の一言でなくなったお年玉
小学生だったある正月、父方の親戚が集まったときのことです。
大人たちは和室の座卓を囲んで話し込んでいました。私は部屋の隅に座り、そろそろお年玉をもらえるかな、と期待しながら待っていました。
ところが、そのときです。伯父が周りを見回し、こんなことを言い出しました。
「今年から、子どもたちへのお年玉はやめにしないか」
私は思わず顔を上げました。
ほかの大人たちは少し間を置いてうなずき、誰も反対しません。
そのまま話が終わってしまったのです。
母が座卓を離れたところで、私は慌てて駆け寄りました。
「ねえ、なんで?お年玉、もらえないの?」
「……あとでね。今は静かにしてて」
母は困ったように笑い、唇の前に指を立てました。
結局、その日は父方の親戚から誰にもお年玉をもらえませんでした。帰りの車でも、私はずっと窓の外を眺めていました。
翌年の正月も同じでした。
一方、母方の親戚は変わらずお年玉をくれます。
それどころか、ごちそうやプレゼントまで用意してくれるのです。
子どもだった私は、すっかり思い込んでいました。
父方の親戚は冷たいけれど、母方の親戚はやさしい、と。
ところが、ある正月のことです。
伯父が何でもない顔で、私にポチ袋を差し出しました。
「ほら、今年の分だ」
「えっ!いいの? ありがとう!」
久しぶりのお年玉に、私は大喜びしました。
しかも、その年の私は、父方の親戚の集まりで誰よりも大きな声で新年のあいさつをしていたのです。
きっと、そのおかげでお年玉が復活したんだ。
そう信じた私は、母に得意げに話しました。
「やっぱり、あいさつって大事なんだね」
母は「そうねえ」と笑うだけでした。
大人になって初めて知った本当の事情
それから年月がたち、大人になって実家へ帰ったある夜のことです。
台所のテーブルで母とお茶を飲んでいると、ふと昔のお年玉のことを思い出しました。
「そういえばさ、父方のお年玉が復活したのって、私がちゃんとあいさつしたからだよね?」
すると母は、お茶を吹き出しそうになりました。
「えっ、まだそう思ってたの?」
母は肩を揺らして笑っています。
「え?違うの?」
「違うわよ。あのころね、父方の親戚のあいだでお金の貸し借りがあったの」
「えっ、お金の貸し借り?」
「そう。どの家も余裕がなくてね。子どもたちにお年玉を配れるような状況じゃなかったのよ」
私は驚いて、母の顔を見つめました。
そんな事情があったなんて、初めて聞きました。
ずっと冷たい人たちだと思っていた父方の親戚にも、当時はそれぞれ大変な事情があったのです。
母は湯のみを置くと、少し笑いながら聞きました。
「お年玉が復活した年を覚えてる?」
「うん。伯父さんが久しぶりにくれた年でしょ?」
あの正月の光景が、頭に浮かびました。
伯父はいつになく晴れやかな顔で、ほかの大人たちと笑い合っていました。座卓には、久しぶりにお酒の瓶も並んでいたのです。
母はうなずきました。
「あれね、親戚のあいだで貸し借りしていたお金が、ちゃんと返されたあとの正月だったのよ」
「……そうだったんだ」
ようやく事情がわかりました。
「じゃあ、私のあいさつは全然関係なかったんだね」
そう言うと、母はまた笑いました。
私も思わず苦笑いです。
何も知らずに親戚を冷たいと決めつけ、お年玉が戻ったのは自分のおかげだと信じていたなんて。
「大人にもいろいろあるのよ」
母はそう言って、ゆっくりお茶をすすりました。
私は、あのころの親戚たちを思い浮かべながら、心の中でそっと頭を下げたのでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














