「食費が1万円も増えてる」同棲したばかりの恋人。だが、お金の価値観が合わなかった瞬間
お金の話は、こじれると聞いていた
同棲を始めるとき、いちばん不安だったのはお金のことでした。
金銭感覚の違いで別れる二人は多い、と友人からさんざん聞かされていたからです。
新生活の楽しみよりも、正直、その一点だけがずっと心に引っかかっていました。
私は、支出をきちんと分けて把握したいタイプ。彼は、レシートも取らない大らかな人。正反対の二人だからこそ、お金のことだけは丁寧にやろうと、ひそかに気を張っていました。
それでも、暮らし始めて二か月目に、最初の小さなつまずきが来ました。
通帳を見て気づいた
ある晩、通帳とノートを見比べていて、数字が合わないことに気づきました。
食費の欄が、先月よりはっきりふくらんでいます。電卓を三度たたき直しても、答えは変わりませんでした。
「食費が1万円も増えてる」
思わず口に出してつぶやくと、ソファでくつろいでいた彼が振り向きました。
「なんの話?」
「今月、食費が1万円くらい多いの。心当たり、ある?」
彼はしばらく天井を見上げて、それから、ばつが悪そうに笑いました。
高そうな食材を、週末にまとめて買い込んでいたのだと言います。
私に相談することは、頭になかったそうです。
「先週、いいお肉が安くなっててね。旬の魚も、つい一緒に買っちゃって」
「それを全部足すと、ちょうど1万円くらいってこと?」
「…たぶん、そのくらい。黙っててごめん」
「怒った?ごめん、美味しいもの食べさせたかっただけなんだ」
こじれずに済んだ夜
ここで責め立てたら、たぶん友人の言う通りになる。そう思って、私は一度ゆっくり息を吸いました。
「怒ってないよ。ただ、黙って増えてるのが、ちょっと怖かっただけ」
「うん。私も、通帳とにらめっこして怖がる前に、口に出せばよかった」
「そっか。じゃあ、まとめ買いするときは先に言うね」
「助かる。次からは、レジに行く前に写真でも送ってくれたら嬉しい」
それで、話は本当に終わりました。責める言葉も、長い言い訳も、それ以上は要りませんでした。
二人で決めたのは、高い買い物の前に一声かけること、たったひとつです。
お金の話は関係をこじらせる、と身構えていたのに、拍子抜けするほど静かな夜でした。あんなに構えていた自分が、少し気恥ずかしくもあります。翌週、彼は魚売り場から律儀に連絡をくれて、私は笑いながら返信を打ちました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














