「次は3日から入るのね」今朝決まった先輩の休みを知る常連客。知るはずのない言葉に背筋が凍った
窓ぎわの席から、レジを見ている女性
私がパートで働くカフェには、毎週決まった曜日にやって来る60代くらいの女性がいます。
注文するのは、いつもコーヒーを1杯。
座る場所も窓ぎわの隅と決まっています。
その席から、ときどきレジのほうをじっと見ているのが気になっていました。
私がレジに立っているときは、必要なやり取り以外、ほとんど話しません。
ところが、長く働いている先輩がレジにいるときだけは違いました。女性のほうから話しかけ、親しげな様子を見せるのです。
ある日、先輩が休みだったときのことです。
女性がレジの前に立ち、私に尋ねてきました。
「ねえ、今日はいつもの人、いないの?」
「はい、今日はお休みで…」
すると、調理場から出てきた店長が応対を代わってくれました。
女性が帰ったあと、店長が小さな声で言いました。
「あの人、先輩がいないと機嫌が悪くなるんだよ」
「先輩とお知り合いなんですか?」
「いや、店で話すだけのはずだけどね」
そのときは、よほど先輩のことを気に入っているのだろうと思いました。
ただ、一つ不思議なことがありました。
先輩の出勤曜日が変わった月には、女性が来店する曜日も変わっていたのです。
勤務の変更は、お客さまが入れない奥の部屋で決めています。
先輩自身も「なんで分かるんだろうね」と首をかしげていましたが、私は偶然だと思うことにしました。
今朝決まった休みを、なぜ知っているのか
ある朝、開店前の奥の部屋で、先輩が来週から1週間休むことが決まりました。
その場にいたのは、店長と先輩と私の3人だけ。出勤表も、その場で書き直したばかりです。
ところが、その日の昼すぎのことでした。
いつもの女性がコーヒーを飲み終え、レジへやって来ました。
会計を担当したのは先輩です。私はすぐ隣でカップを拭いていました。
「ごちそうさま。今日も静かでよかったわ」
「ありがとうございます。またお待ちしています」
先輩がおつりを渡すと、女性は財布をしまいながら、何でもないことのように言いました。
「次は3日から入るのね」
その瞬間、先輩の手が止まりました。
3日は、1週間の休みを終えた先輩が、次に出勤する日だったのです。
「え…?」
先輩が言葉に詰まっている間に、女性は軽く頭を下げて店を出ていきました。
「ねえ、私の休みって、今朝決まったばかりだよね?」
「はい。出勤表も今朝直したばかりです」
「じゃあ、なんで知ってるの…?」
私は何も答えられませんでした。
女性がどこでその情報を知ったのか、まったく分からなかったのです。
初めて私に向けられた視線
それからも女性は、いつものようにカフェにやって来ます。
窓ぎわの席でコーヒーを1杯飲み、会計を済ませて帰っていくだけです。
困らされるようなことをされたわけではありません。それでも、先輩の出勤日を言い当てたあの一言が、ずっと気になっていました。
そんな中、昨日の閉店後、店長から奥の部屋に呼ばれました。
店には、もう私たち2人しか残っていませんでした。
「来月から、朝の番をお願いできるかな」
勤務時間を変えてほしいという話でした。
そして今日。
いつもの曜日に女性が来店し、窓ぎわの席へ向かおうとしました。
ところが途中で足を止め、レジの内側にいる私の顔を、初めてまっすぐ見たのです。
女性は何も言わず、小さく一度だけうなずきました。
それから、いつもの席へ歩いていきました。
ただ目が合っただけなのかもしれません。
それでも、昨日決まったばかりの勤務変更が頭をよぎり、私はしばらく、その後ろ姿から目を離せませんでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














