「雑学なら100個は言えます」面接で胸を張った私。だが、店長の左手を見て言葉を失った理由
前の晩に決めた、たった1つの自慢
大学生のころ、初めてアルバイトの面接を受けたときのことです。
前の晩、何を聞かれるのだろうと考えていた私は、自分の得意なことを1つだけ用意していました。
友達にあきれられるほど、雑学をたくさん知っていることです。
面接は昼すぎ、営業していない時間帯の飲食店で行われました。
客のいない店内の奥にある2人がけのテーブルで、40代くらいの男性の店長と向かい合います。
テーブルには私の履歴書と、店長のメモ帳、ペンが置かれていました。
「家からここまでは、どれくらいかかる?」
「自転車で10分くらいです」
店長はうなずきながら、答えをメモしていきます。
初めての面接だった私は、質問に答えるだけで精いっぱいでした。
そして最後に、店長が顔を上げました。
「何か、得意なことってある?」
来た、と思いました。
私は少し背すじを伸ばして、前の晩に考えていたことを口にしました。
「雑学ならまかせてください。100個は言えます」
「100個?すごいね。たとえば?」
店長が笑ったので、緊張していた私も少し気が楽になりました。
自信満々で話したあと、ペンを持つ手を見た
そこで私が選んだのは、少し前にどこかで聞いて驚いた話でした。
「左利きの人って、右利きの人より寿命が短いって聞いたことがあるんです」
口にした直後、店長のペンを持つ手が止まりました。
私もつられるように手元を見て、固まりました。
店長がペンを握っていたのは、左手だったのです。
思い返せば、面接が始まってからずっと左手でメモを取っていました。それなのに、私はまったく気づいていませんでした。
「あ…」
顔が一気に熱くなりました。
何か言わなければと思い、慌てて言葉を続けます。
「いや、でも…左利きの人は、すごい人が多いって話も聞きますし…」
自分でも、何を言っているのか分からなくなってきました。
店長は左手のペンを置くと、少し困ったように笑いました。
「その寿命の話、昔は言われてたみたいだけど、今は違うってどこかで読んだよ」
「……すみません」
「まあ、大丈夫。気にしてないよ」
その一言に少し救われましたが、店を出るころには、完全に落ちたと思っていました。
3日後にかかってきた、思いがけない電話
ところが3日後、店から合格の電話がかかってきました。
初出勤の日。休憩時間に、面接をした奥のテーブルでまかないを食べていると、向かいに座った店長が左手で箸を持ちながら私を見ました。
「そういえば、今日の雑学は?」
私は一瞬、あの日の面接を思い出しました。
「今日は大丈夫です。誰も傷つかないやつを調べてきました」
そう言って、前の晩に調べておいた雑学を1つ話すと、店長は箸を止めて「へえ」と笑いました。
それから半年ほど、休憩中に店長から「今日の雑学は?」と聞かれることが増えました。
100個あると胸を張ったはずなのに、私は毎回、前の日に新しい雑学を探すようになりました。あの面接以来、話す相手を見てから内容を選ぶことだけは、しっかり覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本記事に登場する雑学・知識は、登場人物の発言や認識をもとにしたものであり、医学的・科学的な事実を示すものではありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














