「オムレツ1個くらい、並ぶほどじゃないでしょ」20分待つ列に割りこんだ女性。だが、料理人が静かに返した正論
20分並んだオムレツの台に、横から来た女性
今は30代の私が、20代のころに彼と泊まった旅館での出来事です。
手ごろな値段の宿で、朝食バイキングの会場は家族連れでいっぱいでした。中でも人気だったのが、料理人が目の前で焼いてくれるオムレツです。
白い調理服を着た40代くらいの男性が、注文を聞きながら一つずつ焼いていました。
列には15人ほどが並び、私と彼はその中ほど。すぐ前には30代くらいの父親と、5歳くらいの男の子がいました。
「おなか、ぐうって鳴った」
「パパもだよ。もう少しだからね」
そんな親子のやり取りに、私と彼も思わず笑ってしまいました。並び始めて20分ほどたち、私もかなりお腹がすいていました。
そのとき、40代くらいの女性が列の横から歩いてきました。そのまま先頭まで進むと、料理人に声をかけたのです。
「うちの子が待ってるの。先にお願いできる?」
料理人が静かに示した、列のいちばん後ろ
先頭にいた年配の男性が、戸惑った様子で声をかけました。
「あの、みんな並んでますよ」
女性は列を振り返り、こう返しました。
「オムレツ1個くらい、並ぶほどじゃないでしょ」
そう言ったまま、女性は台の前を動こうとしません。
「ほら、それでいいから。急いでるのよ」
女性が料理人の手元を指さしたとき、前にいた父親が口を開きました。
「うちの子も、お腹すいたって言いながら20分待ってます。みんな順番を待ってますよ」
男の子は父親の手を握ったまま、黙って女性を見ていました。
女性は一瞬、言葉に詰まったようでした。
すると料理人も手を止め、女性に向かって丁寧に言いました。
「申し訳ございません。順番にお作りしていますので、列の最後にお並びください」
そう言って、料理人は列の後ろを手で示しました。
女性は少し顔を赤くしながら列を見渡しましたが、それ以上は何も言わず、最後尾へ向かいました。
列にいた人たちも、特に何か言うことはなく、また静かに前を向きました。料理人もそのまま先頭の男性のオムレツを作り始めます。
やがて私たちの番が来ました。焼きたてのオムレツは、待ったかいがあったと思えるほどふわふわでした。
席に戻ると、彼がフォークを持ちながら小声で言いました。
「並んだぶん、おいしく感じるね」
私も笑いながらうなずきました。今でも、あの朝のオムレツを見ると、静かに守られた順番のことを思い出します。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














