「現場の作業量、全然わかってないよね」給湯室で課長に愚痴を聞かれた私。だが、翌週の会議で聞いた一言に唖然
背中のドアが開いた音
3年前の夏、昼すぎの給湯室でのことです。30代の私は同僚と2人、流しの前に立って話していました。給湯室のドアは、ちょうど私の背中側にあります。
直前の会議では、課長から新しい仕事の割り振りが示されていました。
私の班は人数に対して作業量が多く、締め切りはわずか3日後。席へ戻ってからも資料を見るたびに、気が重くなりました。
「これ、本当に3日で終わると思ってるのかな」
「表で見ると、そこまで多く見えないんだろうな」
同僚の返事を聞いているうちに、それまで抑えていた不満が口から出てしまいました。私はカップを流しに置き、強い口調で言いました。
「現場の作業量、全然わかってないよね。一回、自分でやってみればいいのに」
言い終わった瞬間、同僚の目が私の肩の向こうで止まりました。
背後でドアが開く音がして、振り向くと、自分のカップを持った課長が立っていたのです。
少なくとも最後の一言は、確実に聞かれていました。私は何か言おうとしましたが、言葉が出てきませんでした。
書き直されていたホワイトボード
課長は表情を変えず、私たちの後ろを通ってポットの前に立ちました。そして、お湯を注ぎながらひと言だけ言いました。
「お茶を1杯、淹れにきただけだから」
そのままお茶を淹れ終えると、課長は静かに給湯室を出ていきました。
しばらくして、同僚が小声で言いました。
「……今の、聞かれてたよな」
「うん……たぶん」
その週は、課長の席の近くを通るだけでも気まずく、お茶を淹れに行くときまで課長の姿を気にしていました。
そして翌週の会議。もし何か言われたら、その場ですぐ謝ろう。
そう決めて席に着きました。
ところが、ホワイトボードの前に立った課長が示したのは、書き直された仕事の割り振りでした。
担当する人数は増え、日程にも余裕ができています。隣の班からも手伝いが入ることになっていました。
課長は私のほうを見て、少し間を置いてから言いました。
「週末、自分でも一通りやってみた。思っていたより時間がかかった。3日では厳しいな」
会議室で何人かが小さく笑いました。耳が熱くなる私の隣で、同僚がぽつりと言いました。
「本当に、やってみたんだ…」
会議が終わると、課長は特に何も言わず、自分の席へ戻っていきました。
私も席へ戻ろうとしたとき、課長の机の上に、何枚もの付箋が貼られた作業の手順書が置かれているのが見えました。
あれから3年たちますが、私は今でも課長の前を通ると、自然と背すじが伸びてしまいます。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














