「プランクトン」「スケルトン」スープに乗せる名前を忘れた母娘。目の前の袋を見て笑った瞬間
母と私の、いつもの物忘れ
夕方の実家の台所で、40代の私は70代の母と並んでスープを作っていました。
母も私も、最近は物の名前がすぐに出てこないことがあります。言い間違えたまま2人で笑うのも、わが家では珍しくありません。
鍋がふつふつと音を立て始めたころ、母がお玉を持ったまま首をかしげました。
「ねえ、最後に乗せる、あの小さくてカリカリしたの、何だったかしら」
鍋の横にはスープ皿が並んでいます。
母が何を言いたいのかは、私にもすぐ分かりました。
ただ、肝心の名前が出てきません。
「ほら、なんとかトンってやつ。最後が“トン”だったよね」
「そうそう。それで、何トンだったかしら」
聞き返されても、やっぱり浮かびません。
「最後がトンなのは自信あるんだけどね」
「お母さんも、そこまでは分かるのよ」
出てくるのは、違う「トン」ばかり
母と顔を見合わせ、思いつく「トン」を順番に言ってみることにしました。
「プランクトン」
「海の生き物は乗せないよ。じゃあ、スケルトン」
「骨も乗せないわよ。バドミントン」
「羽根を乗せてどうするの。ええと……ポン、トン?」
自分で言っておきながら、それが何なのか私にも分かりません。母が吹き出し、私もつられて笑いました。
そのうち答えを探しているのか遊んでいるのか分からなくなり、「プランクトン、スケルトン、バドミントン、トントントン」と手拍子まで始まりました。
居間から父が顔を出しましたが、笑っている私たちを見ると、あきれた顔でそのまま戻っていきました。
その直後、母の視線が鍋の横に置いてあった袋で止まりました。中には、スープに乗せるカリカリしたパンのかけらが入っています。
母がぱっと顔を上げました。
「クルトン!」
「それ!ずっと目の前にあったじゃない」
2人そろってまた吹き出し、母は笑いながら慌てて火を弱めました。それでも笑いが止まらず、その場にしゃがみ込んで、しばらく立ち上がれませんでした。
落ち着いて鍋を見ると、スープは少しだけ煮つまっていました。
それ以来、どちらかが言葉に詰まると、母と私は「トントントン」と口にします。父はその声を聞くと、今でも黙って台所を出ていきます。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














