「滝のトイレがあるんだって!」珍しく電車に乗った母が教えてくれた話。週末、駅まで確かめに行った結果
「滝のトイレがあるんだって」と話す母
母は普段、買い物にも病院にも自分の車で出かける人です。ところがその日は車を点検に預けていたため、珍しく電車を利用したそうです。
その日の夜、実家に顔を出した僕に、母が嬉しそうに話しかけてきました。
「ねえ、駅に滝のトイレがあるんだって!」
「えっ、滝?トイレに?」
「そうなの。今日、お手洗いから出たときにアナウンスが流れてね。
『滝のトイレ』って聞こえたのよ」
母は両手を上から下へ動かし、滝の水が流れ落ちる様子をまねてみせました。
最初は冗談かと思いましたが、母の顔は真剣そのものです。
「滝のトイレ、1回でいいから見てみたい」
「いや、駅にそんなものあるかなあ」
「あるんじゃない?きっと、すごく涼しいのよ。水の音もいいんじゃないかしら」
そう話す母は、すっかり楽しみにしている様子でした。
僕も最初は半信半疑でしたが、観光地には岩の壁に水を流したおしゃれなお手洗いもあると聞きます。
もしかしたら、駅にも変わった設備があるのかもしれません。
話しているうちに僕まで気になってきて、週末に母と一緒に確かめに行くことにしました。
案内板を見上げて、思わず吹き出した理由
土曜日、僕は母を車に乗せて駅へ向かいました。
改札の手前にあるトイレの入口に着くと、母は天井近くの案内板を見上げました。
ちょうどそのとき、近くのスピーカーから音声案内が流れてきたのです。
「ほら! 今のよ、今の! 聞こえたでしょう?」
母が興奮した様子で僕の袖を引っ張ります。
僕はもう一度案内の声に耳を澄ませ、案内板の文字を確かめました。
「多機能トイレは、こちらです」
そこには、はっきりと「多機能トイレ」と書かれていました。
「たきのう」と「たきの」。母は「多機能」を「滝の」と聞き間違えていたのです。
意味が分かった瞬間、僕は思わず吹き出してしまいました。
「ちょっと、何がおかしいの?」
「母さん、あれ見て。『多機能トイレ』って書いてあるよ」
「たきのう…?あっ!」
母は案内板をじっと見つめ、ようやく気づいたようでした。
「なんだ、滝じゃないの…」
あまりにも残念そうな声だったので、僕はまた笑ってしまいました。
「そんなに楽しみにしてたの?」
「だって、どんな滝なのか見たかったんだもの!」
そう言いながら、母もとうとう笑い出しました。
そのあと、売店でお茶を2本買い、駅のベンチに並んで座りました。母はお茶を飲みながら、聞き間違えた放送を何度もまねしては笑っていました。
帰りの車でも、母はまだその話をしていました。
「でも、本当に滝のトイレがあったら、行列ができるわよね」
「まあ、見に行く人はいるかもね」
僕がそう返すと、母は窓の外の駅を振り返り、また小さく笑いました。
結局、滝のトイレは見られませんでしたが、母とこんなに笑ったのは久しぶりでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














