「ブルーベリーの恨みは、もういいの?」畑を荒らすキョンに怒っていた夫。後日、夫が急にうれしそうになった理由
ブルーベリーもトマトも狙う、小さな来客
夫は定年してから、庭の小さな畑づくりに夢中です。
60代の私も30代の息子も、そこで実ったトマトやブルーベリーを食べるのを楽しみにしていました。
ところが、ときどき畑にやって来るのが野生のキョンです。
夜のうちに畑に入り、実を食べたり、ふんを残したりしていきます。
ある朝、畑を見てきた夫が、実の少なくなった枝を見ながらため息をつきました。
「ブルーベリー、今年はほとんど残ってないぞ」
「網、もう一枚かけてみる?」
「やっても下から入ってくるんだよ。まったく、困ったやつだな」
夫は畑のまわりに棒を立てたり、光る板をぶら下げたりと、あれこれ工夫を重ねました。
それでも数日たつと、また実が減っています。
被害が見つかるたびに夫がぼやくので、息子も「またか」という顔で話を聞いていました。
夫が興奮気味に話し始めた朝
それから数日後の朝、私と息子が食卓につくと、夫が先に座っていました。
また畑の話かと思ったのですが、その日の夫はなぜかうれしそうです。
「今朝さ、新聞を取りに玄関を開けたら、目の前の道にあいつがいたんだよ」
夫によると、玄関を出たところでキョンと鉢合わせし、お互いにぴたりと動きを止めたそうです。
「向こうも動かないんだよ。こっちも動けなくてさ。5秒くらい、ずっと見つめ合ったんだぞ。すごいだろ」
「それで、どうなったの?」
息子が聞くと、夫は待っていましたとばかりに身を乗り出しました。
「急に、真上に跳んだんだよ。こんな感じで、びよーんって」
両手を胸の前に寄せ、肩まで動かして跳ねるまねをします。
そのあとキョンは、慌てたように道の向こうへ走っていったそうです。
夫は手で高さまで示しながら、何度もその瞬間を再現します。
私と息子は思わず顔を見合わせました。ついこの前まで「あいつには困った」とぼやいていた人とは思えません。
「ブルーベリーの恨みは、もういいの?」
息子が笑うと、夫は少し照れたように座り直しました。
「いや、それはそれ。だけど向こうも、かなりびっくりした顔してたんだよ」
その言い方がおかしくて、私も吹き出しました。
追い払いたがっていた相手なのに、一度顔を合わせただけで、すっかり親しみが湧いたようです。
次の朝、畑から戻った夫は「トマトがひとつ減ってる」と言いながらも、どこか楽しそうでした。
「あいつ、今日も元気みたいだな」
昨日までの天敵は、いつの間にか夫にとって、少し気になる庭の来客になっていたようです。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














