「またこの前の話をしないといけませんか」閉店時間を過ぎても居座る常連客。だが、店長の顔を見て慌てて帰った理由
閉店時間になっても帰らない常連客
以前、牛丼店でアルバイトをしていたころの話です。
その日は夜のシフトをひとりで任されていました。
閉店時間が近づき、私はカウンターの内側で片づけを進めていました。
店内に残っていたのは、夜遅くにときどき来る男性の常連客だけです。
男性は食事を終えていましたが、空になった丼の前で、湯のみを手にしたまま座っていました。
やがて閉店時間になったので、私は丼を下げながら声をかけました。
「お客様、すみません。そろそろ閉店のお時間なんですが…」
「ああ、そう」
男性は返事をしたものの、席を立つ気配がありません。
少し待ってから、もう一度声をかけました。
「申し訳ありません。もうお店を閉める時間なので……」
すると男性は、少し面倒くさそうに湯のみを持ち上げました。
「まだお茶、残ってるんだけど」
「すみません。でも、もう閉店でして…」
「ほかに客もいないんだし、ちょっとくらいいいでしょ」
男性はそう言って、またお茶を飲み始めました。
「お茶くらい、ゆっくり飲ませてよ」
その言い方に、私は返す言葉が見つかりませんでした。
男性は一度、厨房の奥や客席を見回していました。店内に私しかいないことを確かめているようにも見え、不安になりました。
何度お願いしても帰ってもらえず、閉店作業も進みません。
これ以上ひとりで対応するのは怖いと思い、私はカウンター内にある店の電話から店長に連絡しました。
店長の顔を見た途端、態度が変わった男性
しばらくすると、店長が駆けつけてくれました。
入口から入ってきた店長は、カウンターに座る男性を見ると、すぐに名前を呼びました。
男性は顔を上げ、驚いたように店長を見つめました。
店長は男性のそばまで来ると、落ち着いた声で話しかけました。
「またこの前の話をしないといけませんか」
その一言を聞いた途端、男性の表情が変わりました。
「いや、別に…。もう帰るところだったんだよ」
さっきまで何度お願いしても動かなかったのに、男性は湯のみを置き、慌てて立ち上がりました。
そして上着を手に取り、店長と目を合わせないまま店を出ていったのです。
カウンターには、まだお茶の残った湯のみが置かれていました。
私はあまりの態度の変わりように、しばらく言葉が出ませんでした。
男性が帰ったあと、店長が事情を教えてくれました。
「あのお客さん、前にも同じことがあったんだよ。若いスタッフがひとりの夜に来て、なかなか帰ってくれなくてね」
私は驚きました。
男性が先ほど厨房の奥まで見回していたことを思い出したのです。
もしかすると、ほかに店員がいないか確認していたのかもしれません。
「次からは、無理にひとりで対応しなくていいから。すぐ電話して」
店長の言葉に、私は「はい、ありがとうございます」と答えました。
助けてもらえてほっとした一方で、以前にも同じことがあったのなら、先に教えてほしかったという気持ちもありました。
それでも、ひとりで対応し続けず、店長に連絡してよかったと思います。
私はようやく入口の札を閉店に返し、残っていた片づけを再開しました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














