「こんな店、二度と来ないからな!」と怒鳴った男性客。しかし、再び店に戻ってきた男性が小さく頭を下げた理由
期限切れのクーポンに怒り出した男性客
会社からの帰り道、切らしていた胃薬を買おうと、ドラッグストアに立ち寄りました。
夕方の店内は混雑していて、レジには長い列ができていました。
私の前に並んでいた男性客の番になったときです。
男性は黒い財布をレジ台の端に置き、ポケットから折りたたんだクーポン券を取り出しました。
若い女性の店員が券を確認すると、申し訳なさそうに口を開きました。
「すみません。こちら、昨日までのクーポンなんです」
すると男性は、露骨に嫌そうな顔をしました。
「はあ?昨日まで?昨日は来られなかったんだよ。一日ぐらい何とかしろ」
「申し訳ありません。期限が過ぎたものは、レジで読み込めないんです」
店員が頭を下げると、男性はレジ台に両手をつき、身を乗り出しました。
「客が頼んでるんだぞ!ちょっとぐらい融通きかせろよ!」
その声に、周囲の客たちも思わず振り返りました。
男性はさらに、レジ台をばんとたたきました。台の上にあったレジ袋が小さく跳ねます。
「もういい!責任者を呼べ! 話にならん!」
店員は困った表情で、何度も頭を下げていました。私もすぐ後ろにいましたが、あまりの剣幕に言葉が出ませんでした。
やがて店長が駆けつけ、店員に代わって対応しました。
店長も謝罪しながら説明しましたが、結局クーポンは使えず、男性は割引なしで会計を済ませることに。
「もういい。こんな店、二度と来ないからな!」
男性はレジ袋を乱暴につかむと、そのまま自動ドアの向こうへ出ていきました。
怒鳴っていた相手から差し出された財布
店長が売り場へ戻り、先ほどの女性店員が再びレジに立ちました。
私が胃薬をレジ台に置こうとした、そのときです。
台の端に、黒い財布がぽつんと残されているのが見えました。
先ほど男性が置いた財布です。
店員も気づき、財布を手に取りました。
すると、ちょうど自動ドアが開き、さっきの男性が早足で戻ってきたのです。
男性はズボンのポケットを何度も確かめながら、レジの周囲を見回していました。
店員は男性の姿を見ると、財布を両手で持って差し出しました。
「お忘れ物です」
さっきまで怒鳴られていたとは思えないほど、落ち着いた丁寧な声でした。
男性はその場でぴたりと足を止めました。
「あ…」
何か言いかけたようでしたが、それ以上は言葉が続きません。
さっきまで自分が怒鳴っていた店員が、何事もなかったように財布を差し出しているのです。
男性は気まずそうに目を伏せ、小さく頭を下げて財布を受け取りました。
そして、誰とも目を合わせないまま、足早に店を出ていきました。
その様子を見届けた店員は、再び私のほうを向きました。
「大変お待たせいたしました」
いつもどおりの、穏やかな接客でした。
ふと振り返ると、後ろに並んでいた客と目が合いました。私たちは、どちらからともなく小さくうなずきました。
男性が最後まで謝罪の言葉を口にすることはありませんでした。
それでも、あれほど怒鳴っていた男性が、同じ店員から財布を受け取った途端に言葉を失った姿は、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














