「俺の誕生日は、2万の財布な」加湿器を8000円の新品と言い張る恋人。言われたとおり使おうとすると彼が沈黙
誕生日にもらった不器用な包み
誕生日の昼、彼は8000円の新品だと箱を置きました
カウンターの上に、ことんと箱が置かれました。無地の水色の包装紙に、セロハンテープが何か所も斜めに貼ってあります。
12月に入ったばかりの、よく晴れた土曜日。
私の部屋に遊びに来た彼からの、誕生日の贈り物でした。付き合って1年になる彼は、40代前半です。
「駅前の家電屋で、選んできた。」
「8000円の、新品だぞ。」
彼は、箱を開けたのは今朝の自分が最初だと言いました
テープだらけの包みを私が見ていると、彼は聞かれる前に、早口で説明を始めました。
買ってきた加湿器の中身を確かめてから、自分で包み直したのだそうです。
包装紙を外して箱を開けると、白い卓上の加湿器が出てきました。
「箱を開けたのは、今朝の俺が最初だ。」
「まだ一滴も、水を入れてない。」
そこまで念を押されると、かえって不思議に思いましたが、せっかくのプレゼントです。私は素直に受け取ることにしました。
来月は2万円の財布だと、彼は当然のように言いました
お礼を言おうとすると、彼は来月の話を始めました。
「俺の誕生日は、2万の財布な。」
8000円の新品をもらったんだから、お返しはそれくらい当然だろう、と言うのです。2万円は、と私が口ごもると、彼は眉をつり上げました。
「人のプレゼントに、ケチをつける気か。」
以前、彼の言い分に一度反論したときは、1週間も連絡が来ませんでした。
誕生日の昼に、また同じ思いはしたくありません。私は言葉をのみ込み、両手を胸の前で握りました。
ケチをつける気か、と言われて
彼は、最初の水は私が入れるようにと言いました
彼は、白い加湿器を指さしました。
「さっそく、使えよ。」
「最初の水は、君が入れろ。」
私は加湿器を両手で持ち上げました。流し台は、すぐ左です。
加湿器を使う前に、取り外せる給水タンクを一度すすいでおこうと思いました。
新品でも、保管中にほこりが付いていることがあるからです。
光にかざしたタンクに、白く乾いた輪が何本も見えました
白い本体から透明な給水タンクを外し、すすぐ前に、汚れが残っていないか窓の光にかざしました。
すると、タンクの内側に白く乾いた水あかの輪が何本も見えたのです。
底の部分にも白い汚れがこびりつき、軽く指でこすっても落ちそうにありません。
新品のはずなのに、どうしてこんな汚れがあるのでしょうか。
少なくとも、今朝初めて箱を開けたばかりの品には見えませんでした。
「もう何度も、水を入れた跡です。」
思わず口にすると、タンクの向こうで彼の眉がぎゅっと寄りました。
加湿器を押し返し、2万円の財布もきっぱり断りました
「店の人が、試しに使ったんだ!」
彼は慌てて言い返しました。しかし、その説明にはおかしな点があります。
「箱を開けたのは、あなたが最初です。」
私は、彼が先ほど自分で言った言葉を繰り返しました。彼が今朝初めて箱を開けたのなら、それ以前に店員が水を入れて試したという説明とは食い違います。
彼は何か言いかけましたが、うまく言葉が出てこないようでした。
私はタンクを本体に戻してふたを閉め、加湿器を彼の前へ押し出しました。
しばらく黙り込んだ末、彼はようやく本当のことを話し始めました。駅前の家電店で買ったというのは嘘で、自分の部屋で2冬使っていた加湿器だったのです。
外側だけをきれいに拭いて元の箱に詰め直し、新品として渡したのだそうです。それで8000円の贈り物をしたことにして、私には2万円の財布を要求していたのでした。
ケチはつけません、お持ち帰りください。3冬目も、ご自分のお部屋でどうぞ。2万円の財布も、お断りします。
私がそう告げても、加湿器を前にした彼は、気まずそうに視線を落としたまま、黙って立っていました。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














