
「母は信仰で乗り越えた、自分とは違う」法廷で語られた親子の断絶と、消えない喪失感
日本を揺るがせた未曾有の事件に、一つの司法判断が下されました。2022年、参院選の演説中に安倍晋三元総理を銃撃し、殺害した罪などに問われた山上徹也被告に対し、奈良地方裁判所は無期懲役の判決を言い渡しました。
黒の長袖シャツ姿で入廷した山上被告。判決を待つ間、机の上で手を組み、じっと目をつむっていたその横顔からは、何を悔い、何を見据えているのかを読み取ることはできません。証言台の前に立った際には静かに一礼しましたが、主文が読み上げられる間、時折首を振り、口元を固く結ぶ様子に、法廷内には言葉を選びがたい緊張感が漂いました。
裁判の争点となったのは、被告を凶行へと突き動かした「凄惨な生い立ち」です。母親による旧統一教会への1億円もの献金、家庭崩壊、そして自死を選んだ兄。被告は「母は献金で兄が幸せになったと言った。自分は兄の死に責任を感じ、悔やんでいたのに」と、埋めようのない母との深い溝を吐露しました。しかし、検察側は「不遇な生い立ちは被害者とは無関係」と断じ、暴力による解決を厳しく指弾していました。
この判決に対し、SNSでは極めて多くの声が寄せられています。
『一国の元総理を殺害した重さを考えれば死刑ではないのか。法の下の平等とは何かを考えさせられる』
『背景にある宗教被害の闇は深すぎるが、だからといって殺人が許される国であってはならない』
『ただただ痛ましい。残された家族の喪失感は一生消えないのだから』
『この判決が、今後の宗教問題の法整備や救済にどう影響するのか。注視し続けなければならない』
一方で、被害者参加制度で出席した安倍昭恵さんの言葉は、一人の遺族としての「生身の悲しみ」を突きつけました。代読された陳述では、夫を亡くし、その後を追うように義母も他界した孤独が綴られ、「街の家族連れを見ると涙が止まらない」という一節には、多くの読者が胸を締め付けられたことでしょう。謝罪の言葉がない被告に対し、休憩中に涙を流したという昭恵さんの姿は、どんな背景をもっても埋められない「命の対価」を問いかけています。
司法は一つの結論を出しました。
しかし、この事件が日本社会に突きつけた問いは、判決後も消えることはありません。














