「今年もバーベキュー、やらないの?」子供の質問。しかし、私が渋った理由は隣の家の木にあった
言えないまま2年が過ぎていた
一戸建ての庭で、夏の夕方に家族でバーベキューをするのが楽しみでした。
ところがここ2年ほど、隣の家の植木が大きく育ち、枝や葉が境のフェンスを越えて、うちの庭に広く影を落とすようになっていました。
枝の下では虫を見かけることも増え、落ち葉が雨どいに詰まることもありました。
それでも隣のご主人とは、年に数回会釈を交わす程度。
いきなり苦情を言うのも気が重く、ずっと何も言えずにいたのです。
ある夜、中学生の息子がリビングで聞いてきました。
「今年もバーベキュー、やらないの?」
「庭があの状態だからなあ」
「じゃあ、隣の人に一回言ってみたら?」
その言葉に、僕も「そうだよな」と思いました。言いづらいからと避け続けても、状況は変わりません。
その夜、便せんを取り出しました。
最初は「虫がわいて日当たりも悪くなって困っています」と書きましたが、読み返すと責めるような印象があります。
僕はその一文を消し、何度か書き直しました。
最後に残したのは、こんな文章でした。
「お庭の木の枝が、うちの庭まで伸びてきていて、虫と落ち葉に困っています。お手すきのときに、切っていただけると助かります」
枝がフェンスを越えている様子が分かる写真を二枚同封し、翌朝、出勤前に隣のポストへ入れました。
手紙を読んだご主人の返事
次の週末の朝、インターホンが鳴りました。
玄関を開けると、隣のご主人が封筒を手に立っています。僕は少し緊張しました。
「お手紙、読みました。写真までありがとうございます」
「すみません。直接言えばよかったんですけど……」
するとご主人は首を振りました。
「いや、助かりました。うちからだと、あの枝がそちらまで伸びているのが分からなかったんです」
写真を見ながら、少し申し訳なさそうに続けました。
「虫まで出ていたとは。申し訳ないです」
その日の昼過ぎ、ご主人は脚立を出し、フェンスを越えていた枝を一本ずつ切り始めました。切った枝がこちらへ落ちないようにまとめながら作業し、最後にはうちの庭側に落ちていた葉まで片づけてくれました。
息子も袋を広げて手伝うと、ご主人は「助かるよ」と笑っていました。
夕方になると、久しぶりに芝の上まで西日が差し込みました。
それを見た息子が、物置のほうを見ながら言いました。
「今年はやれそうだね」
僕も「そうだな」と笑いました。
それからご主人は、剪定の季節になると脚立の上から声をかけてくれるようになりました。
「こっち側、大丈夫ですか」
僕が「大丈夫です」と手を振ると、ご主人はうなずき、また枝を切り始めます。
2年間言えずにいたことも、伝え方を少し考えただけで、思っていたより穏やかに話すことができました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














